MILS/SILSそしてHILSへの連携を見越した、エンジンモデルに特化した高速演算ソルバー

2020.10.06 Shuichi Ogawa

皆さま、こんにちは。

IDAJの小川です。

GT-SUITE V2019から、エンジンモデルに特化した新しい高速演算ソルバー「GT-POWER-xRT」がリリースされました。昨年の弊社カンファレンス（ICSC）でのご紹介後には幸いなことに大きな反響をいただき、評価・導入くださったお客様もいらっしゃいます。

そこで、当ブログでもGT-POWER-xRTについてご紹介させていただきます。

GT-POWER-xRTとは？

「GT-POWER-xRT」は、エンジンモデルに特化した新しい高速演算ソルバーの名称です。

以下はGT-POWER-xRTのサンプルモデルで、離散化要素が122個あります。従来のソルバーで計算すると、リアルタイムのおよそ10倍～20倍かかるモデルですが、このモデルをリアルタイム程度で演算することができます。計算速度は使用するPC（CPU）に依存しますが、いずれにしても従来と比べてかなり高速化されることがわかります。

GT-POWER-xRTサンプルモデル

GT-POWER-xRTソルバーの基礎は、GT-POWERと同じ物理法則ベースです。

ナビエストークス方程式や、エネルギー・質量保存則を解きながら高速化しています。従ってGT-POWERとGT-POWER-xRTは、まったく別物のソルバーではなく、GT-POWERとの一致性は比較的高いと言えるでしょう。（計算結果の違いについては後述します。）

さらに本ソルバーは、PC上の計算だけでなく、いわゆるHILS環境にも対応しており、PC上で使用するモデルをそのままHILSへ搭載することが可能です。近年は、制御開発のためのプラントモデルとしてGT-SUITEモデルを使用するニーズが高まっていますので、GT-POWER-xRTを使用すれば、詳細なモデルのままに、MILS/SILSそしてHILSへと領域を跨いで同じモデルを使い続けることができます。

外部環境との接続

GT-POWER-xRTは、GT-ISE上で計算する以外にも外部環境に接続して活用することが可能です。ここからは外部環境との接続についてご説明します。

1.FMI対応

GT-SUITEと同様にGT-POWER-xRTもFMIに対応しています。従って、FMIに対応しているツールであればGT-POWER-xRTモデルを読み込んで使用することができます。

2.MATLAB/Simulink対応

Simulinkモデル上にGT-POWER-xRT用のs-functionを置くことで、MATLAB/Simulinkと連成することができます。

3.HILS対応

dSPACE SCALEXIO、Concurrent SIMulation Workbenchなどの主なHILS環境に対応しています。また、各HILSベンダー様のご協力の元に動作確認や手順書作成などを共同で進めています。

計算結果例

一般的にGT-POWER-xRTモデルの精度について語ることは難しいのですが、一例としてGT-POWERとGT-POWER-xRTの計算結果を比較してみます。図1でご紹介したモデルを対象に、GT-POWERとGT-POWER-xRTでの計算結果を比較しました。このモデルは6気筒のエンジンモデルでターボが付いており、ウエストゲートによるブースト圧制御をしています。ここでは純粋なソルバーの違いを示すため、GT-POWER-xRTモデルとして、いわゆる合わせ込みは行っていません。空気量やトルク、あるいは吸排気系の圧力や温度は概ね一致しており、また回転数ごとの傾向も合っています。またウエストゲート開度は、ブースト圧制御された結果の指示値です。ご注目いただきたいのは計算速度で、GT-POWER-xRTの方が、各回転数で10倍以上速くなっていることがわかります。