【適用事例】パーティクルシミュレーション（DEM）で食品加工における課題を克服（その2）
皆さま、こんにちは。
IDAJのRocky DEMプロダクト担当の河口です。
前回に続いて、パーティクルシミュレーターRocky DEMの食品加工分野での適用事例をご紹介します。
■食品加工装置のRocky DEMの適用例
混合・ブレンド、品質管理、乾燥・熱交換、排出制御、選別・分離、包装工程などの様々な食品加工プロセスにおいてRocky DEMを活用することができます。いくつかの例をご紹介していきます。
Vブレンダー
この装置におけるシミュレーション適応の目的は、混合品質を向上させて均質な粉体分布を形成し、混合時間を短縮しつつリアルスケールでの材料挙動を観察することでした。このVブレンダー（V-blender）の研究のために、Rocky DEMの結果処理ツールを使用して製品の分布を可視化し、異なる装填方法を比較することで、より均一な材料分布が得られることが確認できました。
＜Vブレンダー＞
ミキシングドラム
このミキシングドラムのシミュレーションの目的は、混合完了までの時間を短縮し、高負荷下で均質性を確保しながら運転時間を検討、パラメトリック最適化ツールを使用して様々な混合シナリオを評価することでした。Rocky DEMのパワフルなポスト処理ツールを利用すれば、分析や検討も容易です。
＜タブレットコーター内のタブレット型粒子の攪拌シミュレーション＞
コニカルドライヤー
円錐形乾燥機（コニカルドライヤー）の例では、乾燥効率を向上させ、運転時間を最短にするために、粒子と装置間、粒子と粒子間の熱交換を含めてシミュレーションを実施しました。充填から排出までのプロセス全体を1つのプロジェクト内で定義し、連続的な乾燥を保証するために装置内の温度分布を分析・検証しました。
＜コニカルドライヤー＞
コーヒー焙煎機
コーヒー焙煎機のシミュレーションでは、Ansys FluentとRocky DEMによるCFD/DEMカップリングを用いて、対流と熱伝達を評価する必要がありました。最適な動作時間と負荷を検証し、効率を向上させるために、温度とローター回転数といった作業条件を評価しました。また、コーヒー豆のリアルな形状で表現することによって、より高い精度も実現しています。
＜コーヒー豆焙煎機のシミュレーション（DEMサイド）＞
＜コーヒー豆焙煎機のシミュレーション（CFDサイド）＞
粒子同士の衝突評価
最終製品の品質管理は、粒子が頻繁に衝突するアプリケーションでは特に重要になってきます。
この計算事例では、粒子同士の衝突によってせん断力が発生する環境での製品品質を、DEMシミュレーションを用いて評価しました。
下図は、食品の形状が異なる場合の平均せん断応力の粒子内での分布を表示しています。製品形状の違いによって、製品の崩れの原因の一つとなるせん断応力分布が大きく異なることがわかります。
液架橋力モデル
Rocky DEMの液架橋力モデル（リキッドブリッジモデル）を用いて、ドラム内のコーティングプロセスをシミュレーションした事例です。左側は液膜影響考慮なし、右側は液架橋力モデルを考慮した場合で、明らかに様相が異なることが見て取れます。このモデルでは、粒子への液体の毛細管力と粘性力の影響と、衝突による液膜の輸送を考慮しています。
＜粒子のコーティングプロセスにおける液架橋力モデルの適応例＞
Vベルトコンベア
ジャガイモを搬送するVベルトコンベアからの排出を最適化するために、設備設計シミュレーションを実施し、効率的な搬出入率を実現するための検証を実施した事例です。
＜じゃがいもを搬送するVベルトコンベア＞
食品の充填や袋詰め
粒子シミュレーションは、包装プロセスにおいても非常に有効です。
ポテトチップスやベアグミを包装袋に充填する際の効率を改善するために、Rocky DEMを用いて充填手順を検証し、最終製品の破損や消耗を制御しながら最適な材料への負荷を検討した事例です。充填される食品もリアル形状で再現しただけでなく、充填される側のパッケージである袋もフレキシブルシェル要素でモデリングし、充填とともに袋の形が変形していることがおわかりになると思います。
＜材料梱包工程シミュレーション＞
以上、いくつかの食品加工業界における離散要素法（DEM）シミュレーション事例をご紹介させていただきました。
離散要素法（DEM）シミュレーションは、製品ラインの仮想実験を行ったり、理想的な物理的表現で実世界のオペレーションをシミュレーションする上で重要な設計ツールとなり得ます。Rocky DEM は食品加工業界における様々なアプリケーションに対しても非常にパワフルでユニークな機能を多数有しています。また、ここでご紹介した事例以外にも多くのMovieをYoutubeにアップしています。是非あわせてご覧いただければ幸いです。
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