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【デジタルデータを使い倒す】結果を徹底的に使い倒す(その2)

皆さま、こんにちは。

IDAJの営業部の飯田です。

 

・CAEはどのように使われてきたか?

・MBDプロセスへの取り組み

・モデルを徹底的に使い倒す

●結果を徹底的に使い倒す

・SPDMのススメ

 

世間的に非常に関心が高いAI技術。エンジニアリングにおいて、勘と経験で成り立っている業務は、深層学習の活用に適しているではないかと弊社では考えています。もちろん、導入までのハードルは決して低いわけではないとは思いますが、チャレンジする価値が十分にある分野だと思います。

機械学習とは?

今日は「結果を徹底的に使い倒す」を機械学習の面からご紹介します。

CAE分野にも取り入れられつつある機械学習(マシン・ラーニング)。機械学習は、コンピュータが自動で処理を行う多変量解析から発展した手法群で、最近では従来型の「浅い」学習と、「深い」学習に分類されています。浅い学習は、最適化アルゴリズムを使った最適化やクラスタリング、回帰分析がそれに当たり、従来からmodeFRONTIERに搭載されている手法から、深い学習(深層学習)へと少しずつ技術がシフトしています。

 

 

深層学習と浅い学習の違いは、特徴量を自動抽出する点にあり、深層学習は、多層ニューラル・ネットワークを用いて人間に近い意思決定ができる機械学習手法群です。ビー玉とおはじきの分別を例に取ると、浅い学習では、人間が作った特徴量を教師データから抽出して、その特徴量に対して学習させます。これに対して深層学習では、与えるデータは教師データの画像そのもので、そこから自分自身が学習して特徴量を抽出します。つまり、人間が認識するビー玉とおはじきの違いを特徴量として抽出しなくても良いということになり、それが浅い学習と深層学習の大きな違いです。

 

 

では、深層学習のCAEへの活用方法には、どのようなものが考えられるでしょうか?

その具体例を本田技術研究所様が取り組まれた「機械学習による歩行者保護性能の予測」を用いてご紹介します。こちらの内容は、GTC(註:NVIDIAユーザーイベント「GTC JAPAN 2018」)でご発表されています。

自動車の衝突安全を評価する基準の一つに頭部障害基準があります。ボンネットに頭部に見立てたインパクターを当て、そのときの加速度から頭部にどの程度の障害を負う可能性があるかという障害値を計測します。この計測を打点を変えて何度も繰り返し、頭部障害値の基準が性能基準を満たしているかどうかを評価します。この評価にCAEを用いると、フレームのCADデータ作成に1週間、メッシュ作成に1週間、境界条件設定に2~3日、計算処理に40時間と1つのフレームに対しておおよそ3週間ほどの検討時間を要していました。さらに設計プロセスを概観すると、障害値基準の目標値に対してフレーム構造を作成し、CAEで評価をしてNGであれば構造を考え直すという作業を繰り返し、構造の確からしさが評価できた時点で実車テストを実施して、検証が完了します。もちろん、CAEを適用しない設計プロセスに比べれば格段に評価時間が短くはなっていますが、さらなる効率化を図ることで、評価時間をさらに短縮することが課題でした。そこで、CAE実施前に手軽に構造のあたりづけを行うツール(CAEの代理モデル)として深層学習を取り入れることになりました。

過去に開発した29機種1,977打点を、学習用の教師データとして使用します。これにはシミュレーションのデータと実験データとが混在しています。学習させたデータを元に、新規のミニバン・SUV・セダンの3機種のフード構造の画像データを学習データに渡すことによって、実際に頭部障害値の分布がどのようになるかを予測させます。入力データには、構造の画像データと教師データ(頭部障害値の分布)を使っています。

その結果、マップの一致度が76~80%程度であり、1機種のCAE評価に3週間程度、計算だけでも40時間程度かかっていたものが、AIでの性能予測には10秒ほどしかかかりませんでした。当然、CAEとAIの結果が完全に一致することはありませんが、AIがある分布を出してきても、本当に正しいかどうかはわかりませんので、その点は注意が必要です。しかし、経験の浅いエンジニアが構造の確からしさを見極めることができず、CAEで多数の形状を評価していたことを考えると、一次的な評価をAIで行うことになるため劇的な工数の削減に成功されています。

これまでにも、エンジニアリング領域で本田技術研究所様とは協業させていただいた実績がありますが、現在もご一緒に様々な技術構築を進めさせていただいています。

 

次回は、最終回「SPDMのススメ」と題してご紹介します。

追記・更新:2022年5月23日

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