【デジタルデータを使い倒す】モデルを徹底的に使い倒す
皆さま、こんにちは。
IDAJ 営業部の飯田です。
●モデルを徹底的に使い倒す
このブログを書き始めてから、マーケティング担当のメンバーに「“モデル”っていう言葉、いろんな意味で使われていてややこしいですね」と言われました。確かに多用される用語ですね。“解析モデル”、“物理モデル”、“モデルベース開発”、“モデル化”、単純に“モデル”とだけ言うこともあります。
「モデルベース開発(Model Based Development)」の“モデル”は、何かしらのツールまたは計算式から、ハードウェアの性能やハードウェアの出力を計算するための“数値計算モデル”で、仮想的にパソコン上で実験を置き換えることが可能な“モデル”です。
特に最近は、MATLAB/Simulinkで作成したようなプラント“モデル”とCAEツールの“モデル”の区別があいまいになっていますので、余計にややこしいですね。今日のお話の中でもそのモデルについて触れます。
データを徹底的に使い倒す
システムシミュレーションの考え方では、開発のターゲットやフェーズ、目的によって適したモデルが異なります。たとえば、モーターのシステムを検証するときには、バッテリーとエンジンのモデルが必要になります。この2つのモデルは、それぞれの検証時のモデルをそのまま使うことができます。しかしその場合は、部品レベルの検討に作成された詳細モデルとなりますので、システムシミュレーションで利用するには計算時間がかかり過ぎるため、非効率かつオーバースペックであるといわざるを得ません。目的にあわせた詳細度、モデルの粒度を考慮した適切なモデルを使用することがポイントです。
例えば、パワトレのプラントモデルがあり、それにエンジン、クランク、トランスミッションのモデルがあるとします。システムレベルのシミュレーション(HILS)で使うには、「Faster than RT」という詳細度の低いモデルを選択します。性能を評価する場合には、エンジンとトランスミッションは「for Performance」モデルを、車両と冷却では「Detail Model」を選択します。
実際に、このような取り組みをされているのがAudi社様です。
プラントモデルに相当するHEVのパワトレを対象に、構成要素であるエンジン、ギアボックス、制御、電動部品(以上がシステムモデルに相当)に対して、モデル粒度とサブシステムに対応したマトリクスを作成し、その中のモデルを目的にあわせて使用します。
エンジンの熱損失のモデルを抜き出したものを例に取ります。Level A(T4モデル)は、熱力学第一法則に基づく熱損失の計算だけなので計算時間が早く、様々な機種に対して大まかな熱損失を検討するのに用います。Level B(熱マスモデル)は、エンジンであれば、熱損失のマップを持たせた単純な熱マスとしてモデル化します。ただし、冷却回路については、詳細なモデルを使って組みあわせることによって、どのタイミングでバルブを開けるのか?、バルブはどれくらい開けるのか?を検討し、暖気性能を最適化するなどのシミュレーションの冷却系制御ロジックを最適化します。Level C・D(有限要素モデル)では、エンジンブロックを1つのかたまりとして取り扱うのではなく、そのブロックを有限要素を決めて分割したモデルと冷却回路を組みあわせたシミュレーションで、それぞれの部位と冷却回路との間の詳細な伝熱経路を検証します。冷却回路の流し方を変えて冷却効率を高めたり、局所的に温度が高い部分がないかなどを調べることができます。
次回は、「結果を徹底的に使い倒す」と題してご紹介を続けます。
追記・更新:2021年7月6日
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