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カーボンニュートラル実現に向けた水素利活用課題へのCONVERGE適用 ~実機適用に向けて~(その2)

Jun Mizushima

 

皆さま、こんにちは。

IDAJの水島です。

前回に続き、実際のエンジン適用を見据えて必要となる技術の中から、オートノマスメッシング熱流体解析プログラムCONVERGEによる壁面消炎のモデル化手法についてご説明します。

2050年カーボンニュートラル実現に向けた温室効果ガス排出量削減の一環として、NEDOグリーンイノベーション基金事業「次世代船舶の開発」では、燃料メタンの一部が未燃のまま排出されるメタンスリップを克服すべき課題の一つとして挙げています(※)。また、自動車用エンジンにおいても、未燃炭化水素の排出量を予測することは非常に難易度の高いテーマとされてきましたが、この発生要因の一つが、壁面近傍やピストンリングクレビス領域などで燃料が燃焼せずに残ってしまう壁面消炎現象だと言われています。

(※)国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構 グリーンイノベーション基金事業、「次世代船舶の開発」に着手 ―ゼロエミッション船の普及をけん引―

 

カーボンニュートラル実現に向けた水素利活用課題へのCONVERGE適用 ~基礎検証編~(その1)

カーボンニュートラル実現に向けた水素利活用課題へのCONVERGE適用 ~基礎検証編~(その2)

カーボンニュートラル実現に向けた水素利活用課題へのCONVERGE適用 ~実機適用に向けて~(その1)

 

メタンスリップや未燃炭化水素排出予測のための壁面消炎モデル

1.壁面消炎のモデル化

この現象は、壁面近傍にミクロンオーダーのメッシュを配置し、詳細化学反応を用いた燃焼計算を適用することで予測可能です。IDAJ news vol.106では水素燃料の消炎距離検証結果をご紹介し、2021年開催の弊社カンファレンスでは国立研究開発法人 産業技術総合研究所様にアンモニアを燃料とした壁面消炎の計算結果をご報告いただきました(関連事例はこちら)。しかしながら、実機エンジンを対象とした場合、壁面近傍だけでも数ミクロンのメッシュサイズを適用することは非現実的であり、特に大型エンジンでは実質不可能です。そこで何らかのモデル化が必須となりますが、今回は川那辺ら(エンジン燃焼のCFDにおける壁面消炎モデル、機論B、2003年)のモデルをCONVERGEにUDF機能で実装し、検証計算を実施した事例をご紹介します。本モデルでは、ペクレ数に基づいて壁面消炎距離を求め、壁面からその範囲内にあるセルに対して燃焼速度を制御しました。

 

2.デュアルフュエルエンジン燃焼解析事例

CONVERGE付属のディーゼルエンジンサンプルデータを元に、天然ガスを予混合で吸気し、軽油をマイクロパイロット噴射で燃焼させる方式に変更、壁面消炎モデルの検証を実施しました。ヘッド側ガスケットの隙間や、ピストンクレビス形状もモデル化しています。

パイロット噴射開始時期(SOI)25degBTDC条件における、排気行程直前105degATDCのメタン分布を示します。壁面近傍や隙間、くぼみ部に未燃メタンが残存している様子が再現されています。今回の主題とはズレてしまいますが、SOI25degBTDC条件では15degATDC近辺で、ノッキングのような自着火による高速燃焼が発生しています(図中の赤線)。これを詳細化学反応計算によって捕らえることができました。

未燃メタン質量分率分布(燃焼後半105degATDC)

未燃メタン質量分率分布(燃焼後半105degATDC)

 

SOIを遅角化したケースとの比較を下図に示します。SOI遅角化に伴って、燃焼が緩慢となり指圧ピークが低下し、燃え残り量や未燃メタン排出量が増加、NOx排出量の低減が見られました。

SOI遅角化の影響比較:物理量履歴

SOI遅角化の影響比較:物理量履歴

SOI遅角化の影響比較:メタン質量分率分布図(燃焼後半105degATDC)

SOI遅角化の影響比較:メタン質量分率分布図(燃焼後半105degATDC)

 

本検証については、IDAJ-Blogでアニメーションと併せてご紹介していますので、そちらもあわせてご参照ください。

CONVERGE筒内燃焼解析:メタンスリップ計算事例

本モデルを適用することで、従来手法や1次元計算では難しい未燃燃料が発生する量と発生部位の予測、改善検討が可能になります。火花点火機関であれば、プラグ付け根やインジェクタ近傍、ピストン冠面形状の差異による消炎状況の評価も期待できます。

 

CONVERGEのUDFを用いた技術構築事例として、ガスパーセル法、壁面消炎モデルのメリット、適用事例をご紹介しました。どれも、弊社へご相談いただいた課題の解決を目指す中で生まれた技術です。引き続き、カーボンニュートラルに向けた新しいお取組みをご検討の場合は、ご遠慮なくご相談いただけますと幸甚です。

 

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修正・更新:2023年12月7日

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