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ROM(Reduced Order Model:縮約モデル、低次元化モデル)とは?

皆さま、こんにちは。

IDAJの玉手です。

 

昨年11月14日(木)・15日(金)に弊社が開催したICSC19の中の「Special Session – MBD: Key to Collaborative System Design」では、昨年のバッテリー・シミュレーションをテーマとしたスペシャル・セッションに引き続き、私が進行を担当させていただきました。

これまでの弊社のカンファレンスでは、ユーザー様のご講演をメインに構成しているため、IDAJが取り組んでいる技術を詳細、かつ多岐にわたってご紹介する機会があまりなく、本セッションを参加登録を開始した当時は、どれほどのお客様が集まってくださるのか・・・・不安でいっぱいでした。ですが、いざ参加登録が始まると、想像もしなかった勢いでご登録が増え、最終的には会場の都合でお申し込みを締め切らざるを得ないという、お客様には大変申し訳ない状況となりました。

 

カンファレンス当日は、弊社のエンジニアやコンサルタントが直接お客様とお話をさせていただき、多くの気づきを得ることができました。その中の一つが、「ROM」に関するご関心とご興味の高さです。

Flotherm Confernce Dayで進行を担当していた中嶋も同様の感想を持ったようで、ここでは、中嶋・玉手の両部門で主に担当したROM技術についてご紹介したいと思います。

 

ROM(Reduced Order Model)は、3Dモデルの本質的な挙動を維持したままモデルの次元を落とし(縮退化)、解析時間とデータの容量を大幅に削減する手法です。縮約モデル、低次元化モデルなどとも呼ばれます。

最近ではいくつかのソフトウェアにその手法を用いた機能が追加されています。

 

ROM技術が求められる背景の一つに、MBD(Model Based Development:モデルベース開発)の推進による、シミュレーションの適用領域の拡大があげられるのではないでしょうか。

 

機能設計と形状設計

機能設計と形状設計を考える上では、1D-CAEと3D-CAEのカップリングが必要となります。1D-CAEが使われる機能設計においては、システムの要求を満たす目標値を決定し、続く工程となる形状設計(3D-CAE)へと渡します。3D-CAEを適用した形状設計では、目標値となるように形状を探索、その結果を1D-CAEにフィードバックし、機能設計を修正・改善していきます。

決して、1D-CAEから3D-CAEへの一方通行ではなく、「機能設計と形状設計をサイクルで回す」というのがポイントです。このサイクルを円滑に回す上では、機能を設計する1D-CAEと、形状を設計する3D-CAEのカップリングが課題となります。特に形状因子が大きく性能に影響するケースでは、システムモデルの中に3次元の形状因子の情報を取り込んで計算を行う必要があると考えます。1D-CAEと3D-CAEを直接、連成することによりシステムモデルの一部を3次元モデルで計算するという手法もありますが、1D-CAE単独で計算した場合と比較したときに計算時間やデータ容量が大幅に増えるという点が大きなネックになります。

 

 

 

 

ROM技術

そこで登場するのが、システムシミュレーションやデジタルツインなどへも適用が可能なROM技術です。ROMには大きく分けて2つのアプローチがあります。1つ目のアプローチは、3D-CAEなどで得られた入力と出力の関係を近似関数や機械学習によって代理モデルとして表現する方法です。応答曲面法(RSM)を用いる静的なROM だけでなく、機械学習やディープラーニングを用いて時系列の予測が可能なROMなどがあります。

 

 

 

・RSM(Response Surface Method、応答曲面法)

複数のサンプリングデータを元に近似関数を生成し、出力値を予測する方法です。

 

 

 

・RNN(Recurrent Neural Networks)

ディープランニング(Recurrent Neural Networks)を使用して、非線形かつ動的な挙動が再現可能で、動的な応答を持つパラメータであれば、どのような問題にも対応することができます。

 

 

 

2つ目のアプローチは、形状および物性値の情報から物理的な特性値を抽出し、縮退化する方法です。

例えば、3次元構造解析によって得られた剛性マトリクスを機構モデルに組み込む、3次元形状から抽出した電気特性(電気インピーダンス)を回路モデルに組み込む、あるいは熱特性(熱インピーダンス)を熱回路モデルに組み込むなど、各物理現象に応じて様々な手法があります。

 

 

先ほど、いくつかのソフトウェアにROM技術が取り入れられたとご紹介しましたが、以下にIDAJが取り扱っているツールとそこで使える機能についてご紹介します。

 

Ansys Twin Builder「Dynamic ROM」

多くの現象は非線形のふるまいをしますので、それをシミュレーションで予測する場合は、非定常な予測を実施するために多くの時間を要します。したがって、各設計段階で多数で複数の条件を比較検討したり、実測データをリアルタイムで評価することは非常に難しくなります。

そこで、任意の入力信号に対する動的な挙動をシミュレーションできることが求められており、これらに対応するため、非線形動的ROM 作成の手段を構築したのがANSYS Twin Builderの「Dynamic ROM」です。

Dynamic ROMは、ディープラーニング(RNN; Recurrent Neural Networks)によるモデル推定に基づいていますので、いくつかの学習用のシミュレーションを3次元CAEで実施しておけば、Dynamic ROMを用いた時系列の予測を瞬時に行うことができ、多くのパラメータスタディにかかる時間的コストを大幅に削減することが可能です。

 

●Simcenter Flotherm「BCI-ROM」(Boundary Condition Independent Reduced Order Model)

BCI-ROMは、境界条件に依存しない次数削減モデルで、解析空間の各境界の熱伝達係数を指定することで、任意の条件での解析を行うことができます。要求する相対誤差と、解析で使用する熱伝達係数の範囲を入力すると、MATLABやGNU OctaveなどのMATLAB互換ソフトウェアで解析するためのファイルを出力することができます。

出力したモデルは、これらのシステムツールで、周囲温度と境界条件としての熱伝達係数を変化させて解析することができます。一度低次元モデルを出力すれば、様々な条件の過渡解析を高速に行うことができ、場合によってはFlothermでの熱流体解析時間の1/40,000程度で得られる例もあります。

 

●Simcenter Flotherm「Thermal Netlist」

Thermal Netlistは、Flothermモデルから作成された等価の熱回路網モデルで、回路シミュレータを用いて、熱に関するシミュレーションを実施する際に使用します。

要求する相対誤差を入力すると、Mentor GraphicsのEldoやSystemVisionでの電気回路と熱回路の連成解析に使用するためのファイルを出力することができます。

 

Ansys Q3D/2D Extractor

3D形状因子を考慮しながら配線や基板などの寄生成分を抽出することができる、電気回路のための低次元化技術です。

 

●その他

こちらでご紹介した手法は数あるROM技術のごく一部で、対象としている物理現象や目的に応じて適切な手法を選択することが重要となります。

IDAJにおいても、現在、ROMに関連する技術を開発しています。

 

次回からは、これらのROM技術を用いた適用事例をご紹介します。

 

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