IDAJ

Case Study実績・お客様事例

国立循環器病センター 様(CDAJ news vol.44)

人工肺の研究開発に「STAR-CD」をご利用

国立循環器病センター
研究所 先進医工学センター 人工臓器部
CDAJ news vol.44お客様紹介コーナーより抜粋
発行日 2006年6月

解析種別:流体解析、血液層の流れ解析
課題等:人工肺、生体肺、血液流量、血液、中空糸

省略

人工肺の仕組み

「人工肺」とは具体的にどういったものなのでしょうか?
生体肺の中では、心臓から送られてきた血液と肺に取り込まれた空気との間で血管の壁(膜)を介して酸素と炭酸ガスのガス交換を行っています。人工肺とは、手術などで生体肺への血流を止めなくてはならない場合の代替や生体肺によるガス交換が不十分な場合の補助に用いられる医療機器であり、広く臨床で使用されています。人工肺は、外径300ミクロン前後、内径が200ミクロン前後のストロー状のガス交換が可能な中空糸膜を、数万本も配糸した構造からなるものが主流です。中空糸の中をガスが通って、その外側を血液が通り、中空糸膜を介してガス交換が行われます。浄水器をイメージしてもらうと分かりやすいかもしれませんね。長期使用に際しては、ガス層で結露などによる閉塞が起きたり、血液層で血栓ができることにより、耐久性に大きな影響を及ぼします。

人工肺内部のガス交換解析に大学と連携してSTAR-CDを利用

この人工肺の解析にSTAR-CDを使用されていらっしゃるんですね。
はい。人工肺の主要機能であるガス交換性能は、ガス・血液流量や移動成分濃度の初期条件に加え、中空糸膜の配糸方法によって決まる血流分布に大きく影響を受けます。中空糸の編み方なども複雑で、試作するのも手間がかかりますので、解析でその性能を予測することを試みています。東京電機大学理工学部電子情報工学科舟久保研究室でSTAR-LT、modeFRONTIERを使っていて、人工肺内部の血液流れ解析が行われています。今はそちらと共同研究のような形で、東京電機大学では構造的な面から見たマクロな流れ解析を、私のほうではある程度ミクロな見地から、中空糸膜を介したガス層と血液層間のガス濃度分布を見ています。実際には、一部を切り出してモデル化して、解析を行っています。(図1)
これまで人工肺の数値解析では、血液層だけの流れを対象として、血流路構造の最適化や、ガス層の濃度を一定とした実験式と血液層の流れ解析を組み合わせた手法による酸素移動量の推定などが行われていたのですが、実際に炭酸ガスの挙動を把握するためにはガス層の濃度変化を把握する必要があると考えました。それを踏まえて、今回ガス層も含めた解析を行ったことで、ガス層の濃度分布が血液側の炭酸ガス移動に対して大きく影響を及ぼすことがわかりました(図2、3)。つまり、気体、液体共に解析を行うことで、人工肺のより正確なガス交換性能予測が可能になるのでは、と示唆されたわけです。
CDAJ news vol.44
これまで人工肺の解析では、ガス側は濃度分布を一定として、血液側のみ、流れと酸素濃度の解析が行われていたのですが、実際には炭酸ガスの挙動を把握するためにはガス側の濃度変化を把握する必要があると考えました。それを踏まえて、今回ガス側も含めた解析を行ったことで、ガス側の濃度分布が血液側の炭酸ガス移動に対して大きく影響を及ぼすことがわかりました(図2、3)。つまり、気体、液体共に解析を行うことで、人工肺のより正確な性能予測が可能になるのでは、と示唆されたわけです。
CDAJ news vol.44

ユーザーサブルーチンを用いてガス交換プロセスをモデル化

この解析で、特にどういったところを工夫されましたか。
血液中のガス移動は、ヘモグロビンと酸素、二酸化炭素の反応が非線形反応なので、ガス層の影響も考えると、中空糸束を多孔質媒体(ポーラスメディア)とみなして血液層だけの線形現象として扱うべきでないと考えましたので、微小な部分から解析することにしました。また、実際にはガス拡散に対して化学反応が非常に速く、反応速度に関わるパラメータが明らかになっていません。膜(固体)を挟んだ液体-気体間のガス交換も新たに表現する必要がありました。そこで、これらの現象をユーザーサブルーチンでモデル化することにしました。現在も継続して試行錯誤していますが、定性的にはある程度予測できるようなモデル化ができつつあります。
STAR-CDの気に入っている点はどういったところでしょうか。
やはり先ほど述べましたように、独自のサブルーチンを組み込む必要があったので、それが可能なこと、柔軟であることです。研究的なテーマには、そういった機能が必須になりますから。

このインタビューの詳細は季刊情報誌CDAJ news vol.44でご覧いただけます。
ユーザー登録済の方はユーザーサポートセンターからダウンロードできます。

分野1:
熱流体解析
ユーザーサポートセンター 無料で資料請求