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Case Study実績・お客様事例

エッチ・ケー・エス 様(IDAJ news vol.106-2)

ターボジェネレーターの新設計にAnsysターボ機器ソリューションをご活用

株式会社 エッチ・ケー・エス 開発部 過給商品開発課 様
IDAJ news vol.106お客様紹介コーナーより抜粋
発行日2021年12月

解析種別:ターボ機器、過給機、ターボジェネレータ、高効率化、タービン、羽根形状、MBD
課題等:流体解析、熱効率、最適化、 1Dシミュレーション、3Dシミュレーション、モデルベース開発

省略

タービン形状とハウジングの新規設計で、発電開始の低回転化を実現し発電量を向上

Ansys CFX はターボ業界でのシェアが圧倒的に高く、御社でご適用いただければ比較的早い段階で成果を得ていただけるものと考えてご提案しました。 さて、ここからはAnsys ターボ機器ソリューションをターボジェネレーターの設計に適用された事例をご紹介ください。
まずは、ターボジェネレーターについて簡単にご説明します。ターボジェネレーターは、排気ガスによってタービンを回して発電し、電力としてエネルギーを回収する仕組みで、タービンとジェネレーターの組み合わせです。ターボチャージャーのコンプレッサーをジェネレーターに置き換えた構成とも見ることができます。
図1 ターボジェネレーター
初期世代の製品は、電圧12Vで、出力が1.2kW。その後、48V化することで、出力が5kWに向上しています。現在の製品はハイブリッドシステムとの組み合わせを前提として300Vに対応できるようにしました。空冷だったジェネレーターを水冷にして、1.0リットルクラスのエンジンとの組み合わせで出力6kWのポテンシャルを確保しています。この最新の「ジェネレーション3改」は、組み合わせるエンジンを1.2L3気筒ターボで検証しました。過給圧を上げれば排気流量が増え、発電効率が上がります。定格時の発電出力は10kWで、ポイントは、一つ前の製品よりも800~1,000rpm程度低いエンジン回転数で同等の発電が行えるようになったことです。低流量での立ち上がりを重視して新設計したタービンの効果が発揮されました。この新しく設計したタービンの羽根形状の最適化にAnsys CFXを適用しています。
ターボチャージャーは、エンジンから排出された排気ガスのエネルギーを利用し、風車のような羽根(註:タービン)を回すことによって同軸上の風車(註:コンプレッサー)を回し、空気を圧縮して高密度の空気をエンジンへ送り込んで高出力を得ます。その回転数は10数万回転~20万回転だと言われており、自動車の機械部品としては最高の回転数です。しかし、私たちが開発しているターボジェネレーターは、排気ガスを入れてシャフトを回し、発電機で発電する最大回転数が7万回転のタイプで、ターボチャージャーで使用されているものとは全く異なったタービン翼形状を設計する必要があります。そこで、低回転で効率的にタービンを回すためのタービン翼の検討から始めました。
まず、Ansys Blademodeler(註:Ansysターボ機器ソリューションに含まれる翼設計の専用ツール)を使って今回開発するターボジェネレーターの動作条件において最も性能が得られるタービン翼形状を検討しました。その結果得られたのが15枚のタービン翼で構成される形状です(図4)。続いて翼形状を3次元モデルに起こし、ハウジングは経験則にならって設計した仕様と合わせて、Ansys CFXを用いて3次元CFD計算を行うことで要求される性能が得られることを確認しました。
図2 ターボチャージャーに使用されるタービン翼形状(左)とターボジェネレータ-用に最適化されたタービン翼形状(右)
図3 発電量特性の低回転化を実現

CAEを活用することで、エンジニアとしての技術レベルの向上を実感

Ansys CFXご導入いただいた効果についてお聞かせいただけますでしょうか?
私が実感している一番の効果は、自分たちの技術レベルが、これまでよりも一段階も、二段階も上がったということです。先ほどご紹介した排気タービンとモーターを組み合わせた新しい製品を開発するにあたって、従来型の手法であれば、新しいデザインが生まれるには相当な時間がかかったのではないかと思います。ベテランの設計者が中心となって、実験と試作の繰り返しに重きを置いた開発プロセスとは異なるプロセスを試行し、Ansys CFXを用いたパラスタによる最適化の結果、新しい発想が生まれるきっかけになりました。また、自分が行った設計に対して、それを十分に検討できたのか?その根拠とエビデンスは何か?といった情報を得ることができるのも重要な効果の一つです。
エンジニアとしては、製品の動きやメカニズムに関する理解が得られたり、現象を可視化して複数のエンジニアで共有し、良し悪しをジャッジできたりと、設計品質の向上につながるのではないかと思います。また、人間とは違って、CAEは、24時間365日稼働させることができます。弊社は製造業として小規模で、少人数で多数の製品を設計開発していますので、計算はコンピュータに任せて、人間は手を動かしたり、考えることに少しでも集中していくべきだと考えています。CAEを導入することで、当然、これまでより多くの設計を平行して進めることもできるはずです。さらに、弊社がシミュレーションを活用していることが後押しにもなり、自動車メーカー様との共同研究にも繋げることができました。
現在は、1次元のシステムシミュレーションツールとしてGT-SUITEのご検討を始めていただいていますね。
タービンの羽根形状だけでなく、ハウジングや前後の配管形状を含めて解析すると、計算に17~18時間かかり、それに5ケース程度のパラスタを実行するとそれだけで1週間は必要です。もちろん計算コア数を増強したり、クラウドサービスを利用することによって計算時間を短縮できることはわかっていますが、別のアプローチとして、1次元シミュレーションの活用を検討しています。詳細な情報が必要な部分はAnsys CFXの3次元CFDと連成させて計算し、計算時間の短縮を狙いたいと思います。また、1次元シミュレーションによる性能計算にも取り組んでみたいと考えています。
今後のシミュレーション活用に関するご予定をお聞かせいただけますでしょうか?
普段から、IDAJさんをはじめとするベンダーや様々なメディアから情報を得ており、シミュレーションの活用がものづくり業界において確実に進行していることを認識しています。MBD(註:Model Based Development、モデルベース開発)が開発の主流となっていく中で、弊社も開発スタイルを変えていく必要があると考えています。したがって今後は、一部の製品だけでなく、他の製品にも3次元CFDや1次元シミュレーションを活用することで、技術レベルの向上と、会社全体としての設計効率の向上を目指していくべきだと思います。一方で、シミュレーションの運用においては、各部署間の温度差があり、社内へ浸透させるためにも他社の状況を紹介したり、設計者と一緒に挙げた成果を彼らと共有することで、CAE技術を広める活動も行っていきたいと思います。幸いにして、若いエンジニアの中にはCAEに興味を示している者がおり、頼もしい限りです。
Ansys CFXをはじめ、IDAJに対するご要望などがあればお聞かせいただけますでしょうか?
導入後から技術サポートを使わせてもらっていますが、質問に対する回答が的確でわかりやすく、特に問題はありません。私が主に使っているのはAnsys CFXですが、ライセンス構成としては、FluentやDiscoveryなど様々な機能を利用することができます。これらの利用技術に関する情報を、まとめて広く弊社にご紹介いただく機会があれば助かります。
省略

このインタビューの詳細は季刊情報誌IDAJ news vol.106でご覧いただけます。
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ご活用いただいている製品

分野1:
熱流体解析
分野2:
1Dシミュレーション(システム・シミュレーション)
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