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Case Study実績・お客様事例

アズビル 様(IDAJ news vol.77)

「modeFRONTIER®」を用いた商用ビル向け空調制御の多目的最適化手法の適用検討

アズビル 株式会社 技術開発本部 基幹技術開発部 様
IDAJ news vol.77お客様紹介コーナーより抜粋
発行日 2014年9月

解析種別:多目的最適化、気流解析
課題等:空調制御、空調設備、OpenFOAM、FlowDesigner、連成

省略
ここからは、modeFRONTIERを用いた空調制御に対する最適化手法の適用検討についてご紹介ください。
先ほど簡単にご説明しました「タスク・アンビエント空調」において、快適性と省エネルギー性を高める気流制御が可能となる空調設備の設定値を求めることを目的としました。最適化アルゴリズムの結果を検証することによって、将来、空調制御に適用できるか否かを検討します。気流解析のためのCFDツールは、OpenFOAM®とFlowDesignerです。本日は、これまでの検討状況を3段階に分けてご紹介します。実際には、対象となる室内モデルは検討時期によって多少の修正を加えているのですが、ここでは次に示すモデルを基本としてご説明します。
  1. 2011年末~ OpenFOAM、FlowDesigner連成(アルゴリズム:遺伝的アルゴリズム)
  2. 2012年~ OpenFOAM連成(アルゴリズム:MOGA-Ⅱ、NSGA-Ⅱ)
  3. 2013年秋頃から~ Open FOA M 連成(アルゴリズム:MOGA-Ⅱ、ARMOGA、NSGA-Ⅱ、MOPSO、ES、MOSA、FAST(MOGA-Ⅱ)、FAST(A R MOGA)、FAST(NSGA-Ⅱ)、FAST(MOPSO)、FAST(ES)、FAST(MOSA)、HYBRID)
図1 対象モデル
図1 対象モデル
(1)最初の検討では、遺伝的アルゴリズムを検証しました。各パラメータは以下の通りです。
初期世代個体数:28
世代数:10
交差確率:0.5
選択確率:0.05
突然変異確率:0.1
次に結果を示します。予期した通り、執務者不在の吹き出し口は使われず、執務者に近い吹き出し口から送風していることがわかります。
図2 結果
図2 結果
図2 結果
ここで選択したパレート解には、たまたま良い結果が得られていましたが、そのほかのパレート解にはもっと良い解がありそうでしたのでより詳しく結果を見ていくと、世代を重ねるごとに良い解が見つかっており、気流をうまくコントロールすることによって、消費エネルギーに少なくとも4%以上の違いが出ることがわかりました。また、最適化結果から応答局面を作成することで、局所解も確認しています。最適化アルゴリズムとともに、計算時間についても検証しました。今回のケースでは、理論値には及ばないまでも、遺伝的アルゴリズムは並列計算に適しており、その効果を確認することができました。しかし、実際の空調制御にリアルタイムで用いるには、計算時間がかかりすぎて非現実的な結果となりました。
図3 最適化制御のポテンシャル
図3 最適化制御のポテンシャル
(2)続いて、OpenFOAMと連成させて、MOGA-ⅡとNSGA-Ⅱを用いました。各種確率パラメータはデフォルト値を使用し、Grid Manager機能で5つのPCを使い分けました。modeFRONTIERもOpenFOAMも並列計算に適したアルゴリズムを持っていますが、それぞれの能力を有効的に活用するために、modeFRONTIERの同時実行ジョブ数を7、OpenFOAMで1デザインにつき3並列で計算を投入しています。
次に、結果を示します。ここでも、執務者不在エリアの吹き出し口は使われておらず、執務者がいるエリアを効率的に冷やしていることがわかりました。また、パレート解一覧から、真のパレート解が執務者不在エリアの風量がゼロとなるところにあると考察しました。2つのアルゴリズムを比較すると、MOGA-Ⅱに比べて、NSGA-Ⅱの方がより多く真のパレート解が得られたように思います。計算時間の評価方法として、各アルゴリズムを用いて、良いデザインが見つかるまでに要する時間を比較しました。その結果、NSGA-Ⅱでは、約1時間で有効なデザインを見つけましたが、MOGA-Ⅱでは約4時間もかかっています。この結果からも今回のケースにおいてはNSGA-Ⅱがより有効なアルゴリズムであるとわかります。今回は、単純なモデルを用いて快適かつ省エネになるように多目的最適化を行い、気流制御の可能性を示すことができたと思います。しかし、リアルタイムで空調制御に使用するためには計算時間のさらなる短縮が必要です。modeFRONTIERとOpenFOAMの並列計算機能を利用して、コンピュータの台数を増やしさえすれば、リアルタイム空調制御に適用できる可能性はありますが、今度は計算用のコンピュータの増加が省エネを阻むことにもなります。
図4 室内の温度分布とパレート解一覧
図4 室内の温度分布とパレート解一覧
図4 室内の温度分布とパレート解一覧
(3)最後のケースで検証したアルゴリズムは、MOGA-Ⅱ、ARMOGA、NSGA-Ⅱ、MOPSO、ES、MOSA、FAST、HYBRIDです。IGD(注:Inverted Generational Distance)という評価指標を用いて、あらかじめ規定した真のパレート解と各アルゴリズムを用いて得られた解との距離やばらつきなどを考慮して、アルゴリズムを評価します。その結果、FASTがその他のアルゴリズムに比べてより優れた解を得ることができました。
図5 結果図
図5 結果図
図5 結果図
図5 結果図
図5 結果図
詳細なご紹介、誠にありがとうございました。簡単に今後の展望についてもお聞かせください。
今回の検討を通して、ハードウェアのパフォーマンス向上、最適化アルゴリズムやCFD・最適化ソフトウェアの進化によって、将来的にはリアルタイム空調制御に適用できる可能性があるということを示すことができましたが、現段階では、リアルタイムにCFD計算を最適化して空調制御に取り入れることはできません。そこで、この検討を通して得られた知見を、近い将来において製品化する商品に適用し、従来の製品に比べて省エネに貢献できるよう、実験室やシミュレーションレベルではなく、フィールド試験を実施する段階に進みたいと考えています。またmodeFRONTIERの利用用途としては、CFDとの連成だけでなく制御ツールとの連成にも取り組んでみたいと思います。
省略

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