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Case Study実績・お客様事例

日本電産 様(IDAJ news vol.78)

ブラシレスDCモータ・ファンモータの性能向上に「modeFRONTIER®」を用いた最適化手法を導入

日本電産 株式会社 汎用モータ事業本部 開発統轄部 様
IDAJ news vol.78お客様紹介コーナーより抜粋
発行日 2015年1月

解析種別:最適化、磁場解析
課題等:マグネットトルク、リラクタンストルク、IPMモーター、SPMSM、車載モーター

省略
汎用モータ事業本部 開発統轄部様にmodeFRONTIERをご導入いただいたのが1年ほど前のことです。最適化ツールとして、modeFRONTIERをご選択いただいた理由をお聞かせください。
モータの設計においては、まず、所定の性能を発揮するための磁気回路の設計が必要であり、磁気回路設計を早い段階で最適化することが、設計期間短縮にはどうしても必要でした。そこで、弊社でよく利用している磁場解析ソフトウェアJMAGとの親和性が高いmodeFRONTIERを選択しました。最初は数年前に他の事業部で採用しており、私は自由に使える立場にはありませんでしたが、その有効性だけは理解できていました。そんな中で、弊社では昨年度に設計効率向上を目的として、大幅にCAE増強を行うことになりましたので、当事業部用に1ライセンス導入しました。実は、modeFRONTIERは純粋な解析ソフトウェアではないため、一部反対の声もあったのですが、私自身はその効果がわかっていましたので、説得することができました。今では、どの上長もmodeFRONTIERの成果を認めています。また、導入前から少しずつお世話になっていた技術サポートの方々のレベルが高いことも選択理由の一つです。こちらの“1”の説明に対して“10”理解してもらえる、という印象でして、いつも話が早くて助かります。
続いて、ご導入いただいてからmodeFRONTIERを適用されているプロジェクトについてご紹介ください。
modeFRONTIERは、磁場解析ソフトウェアとの連携活用が多く、特に設計の初期段階において、磁気部品の形状決定によく利用しています。当事業部では多岐にわたるフィールドの製品を取り扱い、それぞれのお客様のご要望に合わせたカスタム設計を行っているため、マグネットの着磁器や治具などを含め、磁気部品を一から設計する機会は少なくありません。モータは、ますます小型、薄さ、軽さが求められていますので、経験や勘だけに頼っていては品質の向上に限界が生じます。
磁気部品の形状パラメータとモータ特性の関係は非常に複雑であり、さらに相互作用も強いため一つ一つを検証していては埒があきません。そこで、modeFRONTIERにより全形状パラメータからパレート解を導出しています。導入前は1パラメータずつ検証しており、形状決定に1週間以上かかっていましたが、今では、1日程度で目星をつけることが可能です。網羅的に、交互作用も含めたすべてのパラメータ寄与度をすぐに把握することもできるので、以後の類似ケースでははるかに早く設計を進めることができます。例として、IPMモータでの設計検証例をご紹介します。

モータのトルクと効率の最適パラメータを短時間で導き出す

従来のSPMSM(Surface Permanent Magnet SynchronousMotor:表面磁石型同期モータ)がマグネットトルクのみを回転力として利用するのに対して、IPMSM(Interior PermanentMagnetic Synchronous Motor:埋込磁石型同期モータ)はリラクタンストルクも加わるので、大出力を得ることができます。モータとしてのトータル発生トルクは、マグネットトルクとリラクタンストルクの合成となり、例えば入力する電流の位相角によってトータル発生トルクは変化します。この電流の位相角と振幅、つまり電流ベクトルを負荷条件に合わせて制御すれば、広い負荷範囲で高性能運転が可能となります。
図1 IPMSMは、マグネットによるトルクとリラクタンスの合成トルクが利用できるので、大出力が期待できる
図1 IPMSMは、マグネットによるトルクとリラクタンスの合成トルクが利用できるので、大出力が期待できる
IPMSMは、その出力の大きさから、ハイブリッド自動車用モータなどに利用されていますが、これまではモータ設計を行う際に必要なベクトル制御の最適パラメータの算出に多くの時間がかかっていました。手計算ですと3ヶ月、経験を生かして条件を絞り込んでも1ヶ月ほど要します。この作業は設計の初期段階から最終のチューニング段階まで何度も実行しなければならず、計算に要する人月は膨大なもので設計工数の増大を招いていました。
図2 磁束を発生させるd軸電流を制御することで合成トルクの最大化が図れることになる
図2 磁束を発生させるd軸電流を制御することで合成トルクの最大化が図れることになる
近年、自動車の分野でモータが活用される領域が広くなりつつあり、主にパワー系用途分野においてはモータのトルクと効率の両立が求められています。modeFRONTIERと最適設計手法の構築によって設計の迅速化が可能であり、車載モータにおいてもシェアを大幅に拡大中です。現在は、制御条件に加えマグネットやロータの形状なども調整し、数段階の最適化により、モータ性能の向上のみならず、マグネットの使用量低減など低コスト化も狙っています。
図3 計算プロセスを加速させることで、最適パラメータ算出時間を大幅に短縮。設計の合理化に大きく寄与
図3 計算プロセスを加速させることで、最適パラメータ算出時間を大幅に短縮。設計の合理化に大きく寄与

一般的なモータにも、そして構造逆解析にも適用

続いて、一般的なモータ設計の最適化事例を紹介します。モータ設計では、電気的な入力条件が制限される中、高効率を目指す必要があります。この事例では、主に巻線に関わるパラメータを設定し、入力電力の制限範囲内において最高効率を達成する仕様を調査しました。範囲外のデザインは、拘束条件により排除されるように設定しています。入力電力がパラメータによって複雑に変わるため、最高効率仕様を予想することは非常に難解な作業ですが、modeFRONTIERを用いることで、複数の最適解を容易に見いだすことができました。
図4 ブラシレスモータ模式図
図4 ブラシレスモータ模式図
図5 制御範囲内での最高効率仕様探索
図5 制御範囲内での最高効率仕様探索
最後に、少し毛色の違う適用事例をご紹介します。構造解析の検討の一環ですが、解析を行う上での材料特性の合わせこみとして、三点曲げ試験の実測結果と比較し、材料非線形性の定義式のパラメータを同定しました。いわゆる逆解析です。modeFRONTIERにより、従来の手作業に比べはるかに早くパラメータを同定できるようになりました。
図6 三点曲げ試験 解析モデル
図6 三点曲げ試験 解析モデル
図7 実測と解析の比較
図7 実測と解析の比較

省力時間は約100日分、金型製作数の削減にも成功

適用事例のご紹介、誠にありがとうございました。様々な分野でご利用いただいておりますので、一概にmodeFRONTIER導入後の効果を測ることは難しいかと存じますが、読者の皆様がイメージをしていただきやすいようにご説明いただけますでしょうか。
具体的な成果としては、あるIPMモータの設計において、出力トルクを下げることなくマグネット重量を10数%低減することができました。パラメータ数が多い設計では、これまで1~2週間程度かかっていた作業を1日でパレート解を算出することができますので、modeFRONTIERを必ず使用しています。ケースによって効果の程度は一様ではないので、約1年間分の効果をまとめてみたところ、省力時間は約100日分にも及んでいました。ある程度の効果は期待していましたが、具体的に計算してみて少し驚きました。これだけ工数が削減されましたので、当然、人件費の抑制にはなりましたが、加えて金型の製作数が減ったことによる開発経費の削減にも貢献したと言えます。
具体的な数字を示してくださいまして、ありがとうございます。将来的にmodeFRONTIERを適用されるご予定の分野を簡単にご紹介ください。
現在は、磁場解析がほとんどですが、引き続き当事業部ではメジャーな解析である、構造解析と流体・騒音解析との連携も検討中です。こちらはダイレクトインターフェースが無いこともあり、磁場に比べると少し苦労していますが、すでに基本的なところはほとんどクリアできています。
省略

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分野1:
電磁場解析
分野2:
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