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Case Study実績・お客様事例

本田技術研究所 様(IDAJ news vol.72)

汎用エンジンの開発に「modeFRONTIER®」をご活用

株式会社 本田技術研究所 汎用R&Dセンター 様
IDAJ news vol.72お客様紹介コーナーより抜粋
発行日 2013年6月

解析種別:振動、強度、最適化、、Exlink最適化
課題等:設計フロー、エンジン計測、EXlinkエンジン、騒音、振動低減

省略

まずは、日常の設計フローに最適化をくわえることから。用途はアイディア次第

先ほど、実際のプロジェクトの中でCAEを活用され始めたとお聞きしましたが、そもそもなぜ、CAEを使ってみようとお考えになったのですか。
私は汎用商品の音、振動、強度のテストを担当していますが、もともと大学などで構造解析の経験がありましたので、テストでの計測と簡易的なCAE結果のコリレーションをすることから始めました。私は、もともと熱流体シミュレーションの担当者として入社しました。流体は現象そのものが見えづらいものなので、現象の理解や解明にはCAEが非常に重要な役割を果たします。現在では、比較的排気量の小さいエンジンの開発、そのエンジンを使ったアプリケーション技術開発、さらに長期的な基礎研究の中で活用しています。
2007年にmodeFRONTIERを導入いただいたのですが、その当時のモチベーションをお聞かせください。
複リンク式高膨張比エンジン「EXlink」のリンク設計において、当時は音と振動に課題を抱えていました。また、同時期に当時の同僚が遠心ファンにおける冷却性能と騒音の両立という課題を抱えていました。そこで二人で"最適化"を試してみようという話になり、それぞれでトライしてみました。そんな中で、問題解決には「多目的」最適化でアプローチするのが良いと考え至り、modeFRONTIERをご紹介いただきました。
最初にmodeFRONTIERを使われたときは、どのようなご感想をお持ちになりましたか。
こんなに楽に使えるのかと随分驚きました。お世辞ではなく、最初に操作してみて良いソフトウェアだと感じました。なにしろ、半日ほどの操作講習である程度使えるようになりましたので。私の場合本業はテストなので、半年ほど計算から離れることは良くあります。そんな場合でも直感的に操作でき、マニュアルに立ち返ることなく直ぐに所望の解析を行うことができます。
ありがとうございます。そこから、現在のように多くのユーザー様にご利用になられるまでには、どのようなことがありましたか。
当時、「最適化」という言葉に対しては"いくつか数字を入力すれば自動で答えが勝手に出てくるのだろう"という誤解がつきまとい、なかなか現場に普及するには至りませんでした。先ほど申し上げたように、私達はプロジェクト単位で開発を進めるため、個人にかかる責任や負荷が大きく、技術者は常に技を磨いていく必要があります。そこで、多目的最適化の意義や必要性について、社内での具体的な事例を示しながら普及にむけた啓蒙活動を行ないました。ある課題に対し意思決定をするのは最終的に担当者自身であり、そのためにはさまざまな角度からその物理現象を検証することが重要であることを、modeFRONTIERポスト処理機能に搭載される多次元解析チャートや、バブルチャート、相関図等を用いてアピールしました。そのうちに、モデルの定式化や結果処理機能を活用して私達が成果を出し始めると、徐々にユーザーが増えていきました。また、ユーザーの拡大には、modeFRONTIERそのものの使いやすさというツールの進化も大きく貢献していると思います。
テスト担当としては、CAEソフトウェアとの連成だけでなく、テスト結果を対象としたデータマイニングとして使用するのも有効ですね。最近ではクラスタリング機能も活用しています。
私どもに取りましては、2009年にご相談いただいた「LabVIEW」(追記:ナショナルインスツルメンツ社製)との連携「実験とシミュレーションの融合」は、非常に大きなトピックスとなりました。
もともとCAE専任部署において数値計算を行う中で、計測・制御においても最適化を適用したいと考えていました。エンジン計測においては、さまざまな目的で膨大なデータ収集を必要としますので、多目的最適化とあわせてモデルベースで計測すると非常に効率的です。特に制御因子が多い場合、主要なパラメータを振り、なるべく大枠での現象をつかむことが重要となります。

設計者とmodeFRONTIERで考える

エンジン計測や適合分野においてはさまざまな専用のシステムがありますが、そのシステムではなくmodeFRONTIERをご利用いただいている理由をお聞かせください。
ダイナモメータと一体の専用自動運転システムは、高度に連携した計測が可能ですが、DOE、最適化のアルゴリズム、結果の解析機能が、非常に限定的です。そこで、計測の自由度と拡張性、多目的最適化機能を充実させるために、modeFRONTIERの多目的最適化機能とLabVIEWでの自動計測機能を組み合わせることにしました。また、応答局面、相関図などの結果を用いてさまざまなパラメータに対する計測結果を多角的に可視化し、設計者がトレードオフしている結果を吟味し、より狙った設計ができるそんな仕組みを構築することも目的でした。
また、これはもっと一般的な場面で言えることですが、多目的問題で、まだ主因子の特定ができておらず、定式化されにくい現象で、自分の仮説を検証するためにmodeFRONTIERを利用しています。modeFRONTIERでさまざまな切り口で解析し、結果を考えるというイメージです。modeFRONTIERは、私達にとって一緒に考えるパートナーですね。

modeFRONTIERが、今まで使われていなかった時間を『使える工数』に変える

モデル定式化、パラメータDOEの決定、自動実行、結果処理の各ステップでmodeFRONTIERをご活用いただけているということですね。
さて、modeFRONTIERをご利用いただいての効果はいかほどでしょうか。
これまでのテストやCAEの結果からは、点で得られる情報をいくつか条件を変えることで線としていました。しかし多目的最適化の検討は、その線にも幅をつけることができます。つまり、ある程度現象の予測が可能になってきます。その予測は、当たっても外れても構いません。その原因に考えをめぐらせることが重要だからです。考えるためのバッググラウンドとなる情報は、ワンポイントのデータではわからなくとも、modeFRONTIERが大量の情報を与えてくれるので、それを元に検討を重ねます。例えば、従来機構のエンジンであれば主要な設計パラメータは4つほどであるのに対し、EXlinkの主要な設計パラメータは11個に増えます。まともにパラメータスタディを実施すると大よそ4億通りになることがわかり、途方に暮れたときもありました。そこで、modeFRONTIERのGAを用いて、1,000~2,000ほどの計算を実施して、抱えている課題に対する性能向上の限界性などを知ることができました。
また、条件を決めて一晩の計算の結果から傾向を把握することができますので、今まで使うことができなかった工数が使える、つまり、使える工数が増えたと言うこともできます。
今まで解を探索できなかったところまで、また、最適な結果に近いデザインを見つけることができるようになっています。ベストだと自分で言い切れる、もしくは納得することもできますね。
それでは、簡単に適用事例についてご紹介ください。
内燃機関の熱効率向上のため、圧縮比よりも膨張比を高める高膨張比熱サイクルを実現する機構として、複リンク機構を用いた高膨張比エンジン「EXlink」の研究に携わっておりましたが、その中でEXlinkエンジンにおける慣性加振力特性とその低減を検討しました。EXlinkエンジンの慣性加振力特性を数値計算により検討した結果、研究初期の機構の主運動部より生じるその最大値は、従来型機構に対し増加しました。この要因は、複リンク機構において、膨張行程中の最大ピストン加速度が、従来型機構に対し増加することが影響していました。そこで、最大ピストン加速度の低減を目的として、複リンク機構の最適化計算を行ない、新たな低振動リンクを検討しました。図の計算結果より、低振動リンクは従来型機構に対し理論熱効率を10%ほど向上させながら、従来型機構以下のピストン最大加速度にすることが可能となった事例です。
図1 事例1
図1 事例1
世界中のさまざまな作業機械の動力源として活用されている汎用エンジンにおいて、さらなる熱効率の向上、排気ガス、騒音・振動低減にむけ、日々研究開発を行っています。その汎用エンジン開発をより高効率にすべく、応答曲面法を用いた最適化技術と、エンジン燃焼診断技術および数値計算技術を組み合わせた、エンジン性能診断システムを構築しました。これにより、応答曲面法によるエンジン性能の俯瞰計測、最適化技術による制御因子の特定、さらに火炎の計測と数値計算による燃焼メカニズムの解明が可能となりました。
図2 事例2
図2 事例2
今後のmodeFRONTIERの利用範囲についてお聞かせください。
直近の課題としては、エンジン部品の強度と軽量化があります。これをシミュレーションベースで検証していきたいと思います。まだまだ、活用の余地があると思いますので、ユーザーを広めていきたいです。
省略

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