IDAJ

Case Study解析事例集

三菱自動車工業 様(IDAJ news vol.90)

SUV・PHEVなどの開発にGT-SUITE・modeFRONTIER®をご活用

三菱自動車工業 株式会社 車両技術開発本部 機能実験部 様
IDAJ news vol.90お客様紹介コーナーより抜粋
発行日 2018年1月

省略
現在、GT-SUITEはどういった領域のテーマに適用されていらっしゃいますか。
冷却水・オイル循環量、エンジン油水温、トランスミッション油温、冷暖房、電池冷却、熱マネージメント、燃費、排ガス温度・流量など多岐に渡っています。
続いて、御社でGT-SUITEやmodeFRONTIERを適用されているテーマや事例についてのご紹介をお願いします。
modeFRONTIERの用途として多いのは、GT-SUITEでの計算のチューニングです。定常計算であればそこそこ良い精度が出ますが、非定常では計算するパラメータが増えるため期待する精度が確保できません。そこでmodeFRONTIERと連成してパラメータの調整を行っています。 特に空調計算では、1回あたりの計算時間がかかるので、夜間を含めた土日を使って効率的に計算しています。熱容量のパラメータを主に扱っていますが、入手が難しいデータもパラメータ化してしまいます。
図1 1D-CAEによる冷却・空調性能評価

工夫次第では数百時間の工数を「0」にすることもできるはず

先ほど、夜間や土日などの空き時間を利用してmodeFRONTIERとGT-SUITEの連成計算をされているとお聞きしましたが、具体的にはどの程度の効果が出ていますか。
空調計算となるとチューニングするパラメータが多く、1回の非定常計算にも時間がかかりますので、すべての計算を終えるには数百時間はかかるでしょう。それをマシンに任せておけるわけですから、工数としてはほぼ「ゼロ」になります。 また、人間では思いつかないような発想を提供してくれるので、開発のサポートともなっています。
1Dシミュレーションは、機能をモデル化するわけですから、システム全体の機能を理解していなければ、自力でモデル化することはできません。しかし、設計変数を指定して、目標値に合うようにmodeFRONTIERを使ってチューニングするフローさえあれば、経験の浅いCAEエンジニアでもチューニングが可能で、ユーザーの拡大が容易になります。
1Dシミュレーションでは、実機通りに設定しても、実験通りの結果を得ることが難しいのですが、modeFRONTIERでチューニングすれば、手作業の頃よりも精度が上がって助かっています。
自動化やパラメータチューニング以外での利用例を、ご説明くださいますか。
熱交換器のレイアウトを決めるために、GT-SUITEを用いて温度予測解析を行ったことがあります。ラジエーター、コンデンサー、オイルクーラーといった熱交換器の位置をパラメータとして、各モニター温度が最小となるように最適化を行います。 まず、modeFRON T I ERがパラメータ値を自動で決定し、COOL3Dのバッチコマンドで形状がオーバーラップしているか否かを判定します。オーバーラップがなければ、GT-SUITEで計算した結果をmodeFRONTIERが取り込み、出力変数に代入してデザインの計算が終了します。オーバーラップがあればその時点で計算は終了です。
modeFRONTIERには、様々な結果分析ツールが搭載されていますので、多次元チャートと階層クラスタリングによるデータ分析も行います。
図2 システムの概要
このときは、いくつかのデザインを試してみましたが、出力変数に拘束条件を与える、目的変数に重みづけをするなど、結果を絞り込むことで最適な配置を検討する必要があることがわかりました。また、物理的な背景を踏まえた上で、より詳細に結果分析をすることによって新しい知見が得られる可能性についても認識することができました。
図3 結果(1)
図4 結果(2)

実験・シミュレーションは、プロジェクトにあわせて自在に活用

ありがとうございます。その他にもご紹介いただける事例はございますか。
続いて、電池冷却のシミュレーションにGT-SUITEを適用した事例をご紹介します。
本シミュレーションを実施するにあたっては、電池パックをGEM3Dを使ってモデル化しました。まず、電池パック形状全体のSTLデータをGEM3Dに読み込むのですが、一度の作業で全領域のモデル化を完了するのではなく、複数回の作業に分けて実行しました。これは、1次元化された空気流路が複雑で、各オブジェクトのノードがわかりにくくなるのを防ぐためです。電池パックの空間のモデル、ブロア吹き出し口から大空間までのダクトのモデル、電池セル部分のモデルのそれぞれをGEM3Dから出力し、GT-ISE上で編集・接続して、最終的に電池パックモデルを完成させます。
続いて、電池パック空間を離散化した、外部サブアセンブリモデルをPHEVシステムモデルに外部アセンブリとして接続して、電池パック内の各電池セルとバッテリーオブジェクトを接続し、最終的なシステムモデルを完成させました。その後、制御をモデル化したSimulinkと連成させ、GTモデルに組み込みました。
図5 電池パックのモデル図
最後にご紹介するのは、エアコン冷媒系異音予測のためにモデリングとシミュレーションに関する事例で、先ほど、導入のきっかけで触れた、冷媒の脈動の予測計算をさらに発展させたものです。
弊社の空調システムは、様々なサプライヤー様から部品をご提供いただいていますので、空調システム全体としての性能を弊社で評価しなければなりません。また、開発段階において、単体では問題なくても、システムにした場合に異音が発生するがリスクあります。その現象を実験で再現するには工数がかかる、また、再現できたとしてもその後の対策に工数がかかる、さらには現象解明に工数がかかるというふうに非常に頭を悩ませる問題の一つになっていました。今後、こういった問題が起きぬよう、まずはどのような現象が発生しているのか、実験と1Dシミュレーションを用いて解明することにしました。
図6 シミュレーションの目的
ご承知の通り、EVやPHEVの登場によってエンジン音やパワートレイン系の音は低減され、空調騒音のような二次騒音が目立つようになりました。車室内の快適性向上のためには、これまで以上に空調騒音の低騒音化が必要です。一般的なエアコンの冷房システムでは、リンクやダンパーの作動音、風切音、笛吹き音、シュー音などの異音が発生し、開発の初期段階において未然に防止することが重要になってきます。そこで冷媒の流れに起因する空調異音である「膨張弁の自励振動音」と「シュー音」に着目し、GT-SUITEの簡易冷凍サイクル計算モデルを用いてシミュレーションしました。
こちら(図7)は、膨張弁の断面を模したものです。ダイアフラムに下向きの力がかかり、ボール弁が開きます。冷媒は、コンデンサーから入って、気体と液体とが混ざった状態でエバポレーターに入ります。エバポレーターで気化し、その後はコンプレッサーに入ります。
この膨張弁自励振動音発生の推測されるメカニズムをご説明しますと、まず、何らかの原因でコンプレッサーから圧力脈動が膨張弁側に入ってきます。続いて、シャフトとボール弁が振動します。そのため、ある条件下において、膨張弁入口の液体の冷媒に圧力脈動が伝播して、配管と共振することによって異音が空気中に伝播することになります。
図7 膨張弁の自励振動音の現象メカニズム
まずは、GT-SUITEで膨張弁をモデル化しました。
従来のモデルは、GT-SUITE標準の膨張弁モデルをベースに性能データをチューニングしていましたが、膨張弁前後にかかる流体力によって弁体を振動させることはできませんでした。そこで、膨張弁を流体力とばねマスとのつり合いを考慮できる詳細モデルに変更しています。
図8 詳細な膨張弁モデル
ボール弁のサイズを変えて3つのケースを陽解法で解きます。計算の安定性を考慮すると、Δtは、10マイナス6乗としました。膨張弁の自励振動音自体を計算することは難しいため、今回、冷媒の圧力脈動で評価することにします。
台上試験では、ボール弁のサイズが大きなケースで異音が発生しており、シミュレーションでも圧力センサー位置での圧力(Psen)で大きな圧力脈動が見られます。しかし、ボール弁のサイズが小さなケースでは、異音は発生しておらず、Psenでもさほど大きな圧力脈動は見られません。シミュレーションで、ボール弁のサイズ違いによる圧力脈動をとらえることができましたので、中程度のサイズのボール弁のケースを計算したところ、こちらでも大きな圧力脈動は見られず、異音は発生しないことがわかりました。
詳細な膨張弁モデルによって、従来のモデルでは再現できなかった圧力脈動をとらえることができました。ここで培った脈動の予測技術は、将来的に何らかの懸念が生じた際には活用できるものと考えています。
図9 台上試験結果との比較
図10 異なる膨張弁仕様での冷媒圧力脈動の比較
今後のシミュレーションの活用についてご計画されていることがあれば、簡単にご紹介ください。
限界領域での性能を予測する必要がありますので、冷却の領域においては制御との組み合わせをさらに発展させなければなりません。
デバイスごとの個々の分野のモデルの精度や予測技術は、ある程度成熟していると思っています。今後は、それらを組みあわせて一つの統合モデルの中で、車両全体としての熱マネや性能評価に取り組まなければならないと考えています。
省略

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