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Case Study実績・お客様事例

本田技術研究所 様(CDAJ news vol.66)

二輪車の開発・設計に「GT-SUITE」をご活用

株式会社 本田技術研究所 二輪R&Dセンター 第2開発室 第1ブロック 様
CDAJ news vol.66お客様紹介コーナーより抜粋
発行日 2011年12月

解析種別:排気系温度
課題等:熱容、熱伝導率、熱伝達率

省略
GT-SUITEを導入されるきっかけをお聞かせください。
1次元シミュレーションツールとしては、すでに他ツールの導入実績がありました。しかしCAEの重要性を認識するにいたり、実際の設計に適用するとなれば、いくつかの新しい条件がクリアできるツールでなくてはなりませんでした。使い慣れたツールを利用し続けるのか、新ツールを導入するのか、ゼロベースで検討しました。選考基準は、次の2つです。
  1. シミュレーションの適用範囲拡大に対応できるツールの多様性
  2. ユーザーの拡大に対応できる技術サポート体制
これらをクリアできるソリューションが、"GT-SUITEとその開発元であるGT社、提供ベンダーのCDAJ"であると判断し、選択しました。
図1 GT-SUITE導入のきっかけ
図1 GT-SUITE導入のきっかけ
図2 GT-SUITE適用の副次効果
図2 GT-SUITE適用の副次効果
昨年度には、GT-SUITEをさらに大幅に増強いただきました。本当にありがとうございます。現在、エンドユーザー様は、どれくらいいらっしゃるのでしょうか?
約140名です。これだけユーザーが増えてくると、GT-SUITEの利用技術やノウハウが分散してしまう恐れがありますのでGT-SUITEの普及・浸透を目指した"GT-SUITEユーザー委員会"を組織しました。これによって、弊所内に利用技術が共有・蓄積されるようになりました。
GT-SUITEの実務フォローも同委員会で実施しています。結果的に解析品質の安定化を図ることができています。組織はそれぞれ別ですが、"GT-SUITEでつながっている"というイメージです。また、対外発表や、社内技報への寄稿、社内技術賞への応募などを積極的におこない、研究成果や実績をアピールし、GT-SUITEの有用性を浸透させる活動にも注力してきました。
今後、ますますのご利用が促進すれば、弊社としてこれほど嬉しいことはございません。今後もトレーニングにおけるニーズ等あれば、どうぞお気軽にご相談ください。
つぎに、現在の開発フローについてご紹介ください。
開発指示があった案件に対して、構想設計がはじまり基本諸元を検討します。従来であれば、その後を先行開発期間と位置づけ、試作、CAEなどが繰り返され、テスト・検証を経て本開発に移行し、量産へと進んでいました。現在では、この先行開発期間を前倒しし、設計構想を物無し(ブツナシ)で検証するDPM(Digital Proto Model)期間へと置き換わりました。大きな特徴としては、DPMにおいてシミュレーションだけを駆使した性能検証までおこなうことです。また、二輪にとってのドライバビリティは大変重要な要素となるため、本開発の早期に造り込み、実車検証します。数年前と比較して、開発期間と開発コストは大幅に圧縮することができました。
しかし、開発期間が短くなったといっても、シミュレーションを実施するには人員が必要です。その工数負荷に大きなピークが生じるという課題が残っています。この工数負荷を最適化、自動化技術を適用することによって低減できないものか・・・。現在はその解決のためmodeFRONTIERを活用することも視野に入れて検討を進めています。
図3 DPM開発環境による開発工数と期間の短縮
図3 DPM開発環境による開発工数と期間の短縮
では、実際にGT-SUITEを用いて開発された事例についてご紹介ください。
GT-SUITEを導入してまだ月日が浅く、量産前の機種が多いため紹介できる例が少ないのですが、最近発売した『CBR250R』のマフラー仕様の検討に適用しました。
二輪車開発においては、性能はもちろんのこと、デザイン性もとても重要な要素となります。ユーザーが「カッコイイ!」「乗っていて楽しい!」と思っていただけるような新機種を開発したい、その思いを実現する必要があります。当然のことながら、エミッションなどの法規制もクリアしなくてはならず、開発期間も含めさまざまな制約の中で開発を進めています。
図4 『CBR250R』デザイン図
図4『CBR250R』デザイン図
従来までのシミュレーション環境では、CAEを実施するために"物を作って計算条件を実測しなければならない"という、本末転倒なジレンマに陥っていました。たとえば、"物無し"でエンジン出力を正確に予測するためには、試作機を作ってその排気温度を測る必要があるという状態です。それが、GT-SUITEが導入され、その適用が進んでからは大きく改善されました。先ほどのお話を例にとれば、図面やレイアウトなどから得られるエンジン諸元や寸法と、熱容量、熱伝導率、熱伝達率を解析条件としてGT-SUITEに入力すれば、排気系の温度を"計算結果"として精度良く求めることができます。つまり、"「形状データ」から「性能」を予測する"というDPM環境が実現できたのです。所内で開発したFMEP予測実験式(注1)を適用することで、エンジン諸元よりフリクションを予測することができます。その他3次元CAEもフル活用することでも、DPMを大きく推進させることができました。次に示す図は、GT-SUITEで事前評価をしたものと、その後、実機検証をした比較図です。
(注1)4サイクル火花点火機関の全機関損失と出力(1990):過去の約300機種に及ぶ4サイクルエンジンのFMEPを解析することによって、主要諸元との関係を明らかにした。SAE論文として既発表。
図5 マフラー背圧
図5 マフラー背圧
図6 マフラー音響減衰量
図6 マフラー音響減衰量
図7 排気系仕様変更出力変化率
図7 排気系仕様変更出力変化率
図8 バルブタイミング変更出力変化率
図8 バルブタイミング変更出力変化率
『CBR250R』の開発期間中に、GT-SUITEの重要性を決定づけた印象深いエピソードがあります。 私たちが担当する開発が終盤を迎えるころ、デザイン部門から1本の電話がかかってきました。「マフラーのデザインを変更して欲しい」と。些細な変更だけなら大きな問題になることはありませんでしたが、デザイン部門からの要求を見て驚きました。デザインが変わっただけでなく、マフラー全体が小型化されていたのです。「時間がない」、最初にそう思いました。しかし『CBR250R』は、各デザイナーがそれぞれの思いを込めてデザインし、製品化を目指していました。そういったデザイナーの思いに応えるのも、技術者としての務めです。また、二輪のデザインは、ライダーの皆さんにとっては非常に重要なポイントです。なんとか要望に応えたいとは思いましたが、従来の試作に頼る方法では期日には間に合いそうにありません。そこで当時まだ適用初期段階であったGT-SUITEを駆使し、新しい意匠形状とマフラー自体の小型化に伴う性能検討にチャレンジすることにしました。その結果4~5日で性能検証を終了し、なんとか開発期間内にデザイナーの望むマフラー形状で目標性能との両立を果すことができました。
省略

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分野1:
熱流体解析
分野2:
1Dシミュレーション(システム・シミュレーション)
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