IDAJ

Case Study実績・お客様事例

シャープ 様(IDAJ news vol.73)

スマートフォンの開発に「FloTHERM®」をご活用

シャープ 株式会社 通信システム事業本部 様
IDAJ news vol.73お客様紹介コーナーより抜粋
発行日 2013年9月

解析種別:熱解析
課題等:温度予測、ジャンクション温度、半導体

省略

熱シミュレーション技術導入にあたっては、他部門やICベンダー様とのデータ連携は不可欠。

要素技術開発センター様には、2011年11月にはじめてFloTHERMをご導入いただき、その後、追加でご契約を頂戴しています。検討開始時には、別の市販ソフトウェアをご利用中だったとのことですが、FloTHERM導入の決め手はなんでしょうか。
以前に利用していたソフトウェアでは、ICベンダー様からご提供いただいたデータや、社内の別部署が作成したデータを読み込むことができませんでした。 そんな時にご紹介いただいたFloTHERMは、他からいただいたデータを活用でき、また、半導体のジャンクション温度が予測できるという点に興味を持ちました。一般的に素子のジャンクション温度が10℃上がるごとにデバイスの寿命は約半分になり、故障率は約2倍になるといわれています。半導体パッケージの設計では、このジャンクションの温度を一定の値以下に抑えることが重要です。また、FloTHERMには、半導体メーカーが提供するライブラリがあることもアドバンテージとなりましたし、機構系・回路系のCADデータとの連携が良く、使い勝手の良いことも決めてとなりました。
現在、FloTHERMのユーザー様はどれくらいいらっしゃいますか?また、実際にご利用いただいてのご感想をお聞かせください。
最初に操作講習を受けたのは私ですが、その後、FloTHERMを使うことができるメンバーは、10名弱にまで増えました。ソフトウェア自体の使いやすさも、短期間でユーザーが拡大した一因だと思います。熱解析は実際のプロジェクトの流れに組み込まれていますので、要素技術開発において大いに役立っていると思います。
続いて、スマートフォンの発熱課題についてご説明ください。
現在のスマートフォンは、
  • アプリケーションプロセッサの処理能力向上
  • LTE等の高速無線通信の進展に伴うデータ処理量の増加
  • 表示デバイスの高精細化、カメラの高画素化
が進み、発熱量と消費電力の増加を招いています。
図1 通信技術の変遷
図1 通信技術の変遷
図2 機能の進化
図2 機能の進化
また、スマートフォンは、
  • 薄型化に対する要求が高い
  • 防水性能に対する要求から密閉筐体であり、放熱設計が難しい
  • モバイル機器であるため、ユーザー様の手に直接触れることから、筐体表面温度の制約が厳しい
  • 動作モードで発熱の状態や場所が変わる
という商品としての特性を持ちます。これまでは、熱問題に対してモノを作ってから経験的に解決策を探していましたが、現在ではそのアプローチ方法では課題をクリアできなくなりました。そこで、モノを作る前に熱シミュレーションを活用して、予め熱課題を排する手法を取ることにしました。
FloTHERMによる熱解析は、どの機種に適用されているのでしょうか?
現在では全機種へ適用しています。

シミュレーションで多くのバリエーションを試し、設計に判断材料を提供したい。

FloTHERMを使ったプロジェクトについて簡単にご紹介ください。
回路開発部門、機構開発部門、ソフト開発部門といった商品設計を担当する部門と連携しながら、スマートフォンやタブレット等の熱シミュレーションを実施しています。基本的には私の部署がシミュレーションを統括していますが、商品開発部門との打合せを行うなど連携をとりながら、より細かい情報を刷り合わせた上でシミュレーションを実施するようにしています。解析フローは3D CADデータからFloMCAD Bridgeを介して、また回路系CADは配線パターンやビアデータを取り込んでモデルを準備しています。現在は、より効率的な解析を実現するために、3D CADモデルの簡易化についても社内でノウハウを蓄積しているところです。先ほど述べたように、FloTHERMを用いた解析フローでは、データの流れがスムーズで作業に支障が出ることはありません。また、実測との比較では、部品ごとのポイントでモニタリングしていますが、1℃~数℃程度の誤差にとどまり、精度の良い解析が実現できています。また、これからは熱設計コンサルティングサービスを利用して、熱解析と、実測・熱設計の両側面の精度向上に取組みます。その中で、解析結果を、実設計により役立てるように活用できればと考えています。
図3 FloTHERMを用いたプロジェクトの流れ
図3 FloTHERMを用いたプロジェクトの流れ
こちらは、スマートフォンの構造検討における熱シミュレーションの実施例です。筐体の3D CADデータ、配線パターンを含めた回路CADデータを取り込み、放熱部材を組み込んだ場合と組み込まない場合の表面温度を比較しました。ここでは、筐体温度の低減とともに、消費電力の削減が目的です。スマートフォンはご存知のとおり、筐体内部に隙間なく部品が詰まっており、自然対流での熱逃げが難しいため、基板周辺の放熱が非常に重要です。そこで、配線パターンを考慮した詳細解析でのケーススタディは、試作評価の工数削減、定性的な評価にも非常に役に立つものと考えています。
図4 筐体表面温度分布
図4 筐体表面温度分布
これからトライしてみたいとお考えの解析はありますか?
スマートフォンは、動作モードによってそれぞれのデバイスの消費電力(=発熱量)が異なり、また、CPU等は比較的細かく制御するので、それら状態の変化を可視化する、過渡解析にトライしてみたいと考えています。定常条件の場合、得られるのは平衡状態の温度のみですが、過渡解析では、時間軸で温度変化を追うことができます。また、定常の場合、安全側にマージンを取らざるを得ないのですが、発熱や冷却条件を平均化せずにそのまま設定できることにメリットを感じています。ただ、非定常解析だと演算量が増えますので、それを抑えるためにメッシュ生成やモデルの簡易化など、ある程度の精度を確保しながらどういったアプローチをとれば良いのか、IDAJさんにアドバイスをいただきたいところです。また、近い将来には、私達の部門だけでなく、設計者が考え、シミュレーションできるようにしたいので、設計者への技術展開についてもご協力いただけると助かります。
図5 IDAJが提案するフィードバック制御システム(その1)
図5 IDAJが提案するフィードバック制御システム(その1)
図6 IDAJが提案するフィードバック制御システム(その2)
図6 IDAJが提案するフィードバック制御システム(その2)
御社の課題にあわせてできるだけサポートさせていただきます。秋以降にリリース予定の、FloTHERM V10は、並列性能が向上していますので演算量が多い非定常解析もターゲットとすることができるかと思います。また、GUIがすべて日本語化され、さらに使いやすくなりますので、さらにユーザー様が増えることを期待しています!
省略

このインタビューの詳細は季刊情報誌IDAJ news vol.73でご覧いただけます。
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