IDAJ

Case Study実績・お客様事例

NECエンジニアリング 様(IDAJ news vol.84)

小型から大型電子機器まで、多数の設計開発に「FloTHERM®」をご活用

NECエンジニアリング 株式会社 組込みシステム事業部 様
IDAJ news vol.84お客様紹介コーナーより抜粋
発行日 2016年6月

解析種別:熱解析
課題等:LCDモニタ、冷却技術、車載、熱設計、試作品評価

省略
続いて、FloTHERMをどのようなプロジェクトで適用いただいているのか、簡単にご紹介ください。
弊社は、NECあるいは社外のお客様からご依頼いただき、主に電子製品の受託開発を承っています。生産工場は持っていませんので、電子製品の試作製造のプロセスにおいては協力会社と一緒に取り組んでいます。弊社の強みは、特にフロントローディング設計と試作品評価における信頼性評価のステップで発揮できると考えており、FloTHERMなどを用いたシミュレーションもこのプロセスにおいて活用しています。
図1 NECエンジニアリング様の主な製品とサービス
図1 NECエンジニアリング様の主な製品とサービス
実際に受託開発される製品には、どのようなものがありますか。
コンピュータ、通信、放送、宇宙、車載、医療、エネルギーまで多岐に渡る電子機器全般です。特に現在、車載、医療、エネルギー分野は力を入れている領域ですが、これらの分野で利用される電子機器は、従来のような屋内の比較的クリーンな環境で使われてきた電子機器製品とは異なり、屋外や特殊な環境下での利用が想定されますので、防塵防滴が条件です。つまり、熱対策の重要性が増しているわけです。 ここからは、これまでに弊社で承った事例を簡単にご紹介します。
こちら(図2)は、サーバやスーパーコンピュータ、デスクトップパソコン、LCDモニタに対する冷却技術・熱解析技術を構築した事例です。複数枚のボードが搭載されたサーバをファンにより冷却した時の空気の流れをシミュレーションし、全体の空冷流路を最適化することによって、温度上昇と騒音発生を抑えた事例や、LCDモニタの制御基板、電源基板へのLCDの熱の影響を最小限に抑えつつ、LCDの面内温度を均一に保持するための冷却技術を構築した事例など、多くの実績があります。
図2 大型機器における熱設計・熱解析事例
図2 大型機器における熱設計・熱解析事例
2つ目は、通信機器に使われるプリント基板を数十枚搭載した大型のラック型筐体において、自然空冷の性能向上を目的として、遮蔽板形状を検討した事例です(図3)。お客様ご自身のご経験を生かして遮蔽板を設置し、実測から放熱が改善された結果はわかっていらっしゃったのですが、なぜ改善できたのか、その要因が知りたいということで弊社にご依頼いただいた案件です。図をご覧いただくとわかるように、従来の対策では、筐体下部の空気の吸い込み口から取り入れるフレッシュエアーが筐体背面に抜けづらく、上段になればなるほど熱がこもっています。そこで、遮蔽板を設置することによって筐体背面まで空気が対流し、放熱効果が断然上がるわけなのですが、CFDで流れを可視化することによってその効果も確認することができました。
この事例は、ずいぶん前に承った案件なのですが、個人的にはCFDの有効性を実感できた思い出深い内容なんです。
図3 大型筐体における自然空冷の性能向上
図3 大型筐体における自然空冷の性能向上
3つ目は、こちらも比較的大型の通信機器のキャビネット内における、強制空冷の性能向上を検討した事例です(図4)。キャビネット内の中央下の一部に、ヒートスポットが発生しています。原因は、周辺のシェルフからの排気が、熱交換器の吸気口から取り込まれ、十分なフレッシュエアーが取り込まれていないことにありました。もちろん、実測で確認しましたが、実測結果は数字の羅列に過ぎず、内部の様子も推測レベルでしかありませんでした。そこで、ヒートスポットをCFDで特定し、吸気口にフレッシュエアーを流せるように、ダクトを追加して解決しました。
図4 大型筐体における強制空冷の性能向上
図4 大型筐体における強制空冷の性能向上
4つ目は、小型電子機器の冷却技術と熱解析技術構築の例です(図5)。こちらの図にあるように、二つ折り携帯電話を開発していたころは、エクセルで作成した簡易の熱設計ツールを概念設計段階で利用し、試作前に放熱構造の改善効果をある程度まで把握することができました。しかし、スマートフォンに開発の主流が移行してからは、防塵防滴の要求が高く、極めて薄型の機器であるため、放熱対策の選択肢が限られるようになりました。放熱対策には、熱拡散シートなどの放熱材料を用いることが多いのですが、その際の装置表面温度の予測には、簡易な熱設計ツールではなく、3次元の詳細温度シミュレーションが必要です。
ノートパソコンでは、装置全体に対してCPUの発熱が占める比率が高いため、CPUと放熱部品を接合する方法が、装置全体の放熱性能を左右します。そこで、強制空冷のためのファンの効果を確認するシミュレーションを実施しています。また、サーモグラフィなどの赤外線カメラに搭載されている赤外線センサは、温度が特性に与える影響が大きく、放熱方法の選択が製品の主要な性能を決めるため、シミュレーションによる確認を欠かすことができません。
図5 小型筐体における熱設計・熱解析事例
図5 小型筐体における熱設計・熱解析事例
最後は、通常のノートパソコンではなく、堅牢なノートパソコンの開発における放熱性能向上に取り組んだ事例です(図6)。使用環境50℃を達成するために放熱構造を探索し、新たな熱拡散放熱構造による高速CPU搭載の実現性を探ることが目的でした。ヒートパイプやグラファイトシートという放熱デバイスを駆使して、熱解析と実測との温度が±3℃以内、数10種類の放熱構造を短期間で検討することができました。
図6 堅牢ノートパソコンの放熱性能向上
図6 堅牢ノートパソコンの放熱性能向上

熱解析の短時間化と高精度化を両立

数多くの事例のご紹介をありがとうございます。初期の事例に比べて、熱解析技術と放熱技術を組み合わせたソリューションが増えていることが、電子機器製品のトレンドの変化を顕著に表していますね。
さて、続いては昨年のカンファレンスでもご紹介いただきました「半導体パッケージ2抵抗モデルの高精度化」について、改めてご紹介ください。
先ほど、ご説明したように、電子機器の小型化と高性能化の進展に伴って、発熱密度は向上し、熱設計が商品差異化技術の一つとなってきました。また、CADやCAE技術の進歩、その利用環境が整ってきたため、設計のためのCAEが普及し、設計者がCAEを行うようになってきました。設計者が行うCAEにおいては、従来の研究開発時点でのCAEよりも、シミュレーションの精度は高いレベルが要求されます。
そこで、電子機器内部の半導体BGAパッケージを題材として、2抵抗モデルの精度を向上させるために、内部抵抗値θjc、θjbの補正方法も含めてご紹介しました。まず、高精度化を実現するためには、誤差の要因を把握しなければなりません。そのために、放熱条件を6通り設定して熱解析を実施しました(図7、図8)。
図7 誤差の評価条件
図7 誤差の評価条件
図8 温度上昇の誤差
図8 温度上昇の誤差
その結果、放熱性能が高い条件ほど、2抵抗モデルの温度は詳細モデルに対して相対的に低くなることがわかりました。誤差は、最大で20%以上あります。温度が低い結果がでるということは、熱設計において非常に大きな問題です。小型の電子機器の場合、直接、人間の体に触れるものが少なくありませんから、ここで見積もりを誤ることは避けなければなりません。そこで、この誤差の要因について検討してみました(図9)。要因の1つ目は、ボード側の温度Tb(註:基板温度)の測定位置です。JEDECのモデルでは、パッケージ外側のボード上にTb測定点があるのに対して、2抵抗熱モデルでは、パッケージ直下の面全体の平均温度が用いられています。
2つ目は、内部熱抵抗の変動があげられます。JEDECでは、1つの条件で熱抵抗を与えているのに対して、実物のパッケージでは、放熱条件によって変動します。そして最後は、水平熱抵抗の有無です。実物のパッケージでは、水平熱抵抗を考慮しているのに対して、2抵抗熱モデルでは水平熱抵抗は考慮されていません。
図9 誤差の要因
図9 誤差の要因
続いて、誤差を補正する方法を検討しました。Tb測定位置の補正、放熱条件に依存して決まる内部熱抵抗変化の補正、水平方向熱抵抗の補正と3段階の手順をとることで、ヒートシンク有無、自然空冷・強制空冷など半導体パッケージ部品の設置条件によっては、実測との誤差が20%以上あったものが、おおむね5%以内に抑えられる見通しを立てることができました。そして、自然空冷による放熱器を用いたものは、他の放熱条件よりも補正後の誤差が大きく、さらなる検討が必要であることもわかりました(図10)。
図10 補正後の温度上昇の誤差
図10 補正後の温度上昇の誤差
半導体パッケージの熱抵抗モデルの中で一番シンプルな2抵抗モデルは、電子機器の熱解析においてよく利用される一方で、その精度向上について論じられることは必ずしも多いとは言えないと思います。 2抵抗熱モデルの高精度化に取り組まれた理由は何でしょうか。
現在は、多抵抗モデルに比べて2抵抗モデルの方が、半導体パッケージメーカーから情報がオープンになっており、より広く普及しています。また、内部抵抗が2つなので、放熱性能が理解しやすく設計者が判断しやすいことも理由の1つです。
2抵抗モデルの方が、熱設計者が直感的に熱設計に生かしやすく、有用性が高いということですね。
省略

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