IDAJ

Case Study実績・お客様事例

大成建設 様(IDAJ news vol.83)

室奥まで太陽光を届ける採光装置の最適化に「modeFRONTIER®」をご活用

大成建設 株式会社 技術センター 建築技術研究所 エネルギー研究室 様
IDAJ news vol.83お客様紹介コーナーより抜粋
発行日 2016年3月

解析種別:形状最適化
課題等:採光装置、光、室奥、昼光照明、室内、天井

省略

評価するために"感覚"を式化、評価基準を検討するツールとしてのmodeFRONTIER

「心地よさ」は、人が「感じる」ものです。それらは、どのように定義されたのでしょうか。また、どのように評価されましたか。
「明るさ」と「まぶしさ」の適正化です。心地よい「明るさ」をもたらす光は、天井面からの拡散光に変換された昼光、不快をもたらす「まぶしさ」の原因となる光は、直接的に人の眼に入る昼光と定義しました。室奥の天井面に昼光を導きながら、人の眼に入る光をカットすることを技術的に実現する採光装置とはどういうものか・・・。まずは、採光装置の形状を様々に検討しました。昼光の天井面への到達量と到達距離、昼光が人の目線の高さに入らないかどうかを、照明光学評価ソフト「照明Simulator CAD」(以下 照明Simulator)で解析しました。これは、CADで作図して解析を実行するということを延々と繰り返す試行錯誤が続く作業だったのですが、最終的には現在は特許を出願しているこの形状にたどり着きました。放物線における光の特性に着目し、放物線を組み合わせる設計手法による形状です。
図1 人的作業による採光装置の最終形状
図1 人的作業による採光装置の最終形状
この後、modeFRONTIERのご利用についてお問い合わせいただきました。最適化への取り組みについてご紹介ください。
これらの作業を終えて、今回、人的に検討した形状は最適であるのか否か、今後、新たな形状検討にあたって、また作図と解析の試行錯誤を繰り返すのか、という課題が残りました。そこで、形状決定における多数の因子や水準を組み合わせて、形状を自動的に最適化するシステムを開発することにしました。IDAJからは、これまでにも最適化について提案していただいていましたので、ちょうど良いタイミングでした。最適化は、形状情報として2Dカーブの各座標値を照明SimulatorからmodeFRONTIERへ、照度等の結果情報をmodeFRONTIERから照明Simulatorへというフローです。残念ながらmodeFRONTIERには、照明Simulatorのインターフェースがありませんでしたので、IDAJの環境構築サービスを活用しました。形状最適化では、2つのアプローチを設定しました。
1つ目は、放物線を組み合わせた設計手法における最適な形状を確認するために、放物線形状の因子と水準の最適を求めるものです。まず、複数の放物線形状の因子と水準を入力すると曲面形状を点群で出力するエクセルを作成しました。modeFRONTIERのワークフローでは、このエクセルをノードとして組み込んでいます。modeFRONTIERで因子と水準、上限と下限を設定して、エクセルで点群を生成し、光解析を実行します。
2つ目は、放物線を組み合わせる設計手法にとらわれない、まだ想起されていない形状の探索を目的としました。ここでは、IDAJのエンジニアの方とも相談して、自由度が高いベジエ曲線の因子と水準を検討します。複数の制御点を変数として曲線を生成、制御点の数と上限・下限を設定して自由度を増減させます。2つのアプローチとも、太陽高度を10度刻みに20度~80度を対象とし、評価値は室内の天井面への直射日光の到達量、制約条件として立位1,500mmでの居住者へのグレアを設定します。
図2 最適化の概要
図2 最適化の概要
図3 最適化フロー
図3 最適化フロー
最初は、設計手法に基づいてパラメータの水準を設定し、放物線の頂点座標と軸の傾きという変数から、エクセルで座標を計算します。最適化の探索履歴を見ると、なだらかに評価値が漸近する良好な探索過程を見て取ることができます。最適化トップ10は同様の形状となり、人的作図形状に比べて右端がやや下方に位置し、評価値として人的作図形状よりも良好な結果を得ることができました。
図4 最適化探索履歴と結果(1)
図4 最適化探索履歴と結果(1)
図4 最適化探索履歴と結果(1)
続いて、2つ目のアプローチを試しました。ベジエ曲線の制御点を変数として、JAVAによって座標値を生成します。自由度が高い形状作成手法であるため、振れ幅の大きな探索結果となりました。こちらも、最適化トップ10はほぼ同様の形状で、人的作図形状に比べて傾斜の中腹がやや凹んだ形状が示されました。
図5 最適化探索履歴と結果(2)
図5 最適化探索履歴と結果(2)
図5 最適化探索履歴と結果(2)
これらの結果から、いずれも同様の形状で、人的作図形状の妥当性を確認することができました。また、最終的には実大モックアップで太陽高度に左右されない室奥への採光が確認でき、加えて5分の1縮尺の室内模型を使った被験者による視環境の検証実験からは、まぶしさはほとんど感じることがなく、かつ空間全体の明るさ感が向上したという結果を得ることができました。
2014年5月に完成したZEB実証棟では、窓面の上部に今回検討した採光装置を設置しました。実証棟内の照明計画のコンセプトは、低照度でも十分な明るさを保つことができるタスク・アビエント照明で、採光装置や上下に向けて設置した高効率LED照明、有機ELタスクライトを組み合わせて、効率よく空間全体の明るさ感を確保します。上向きの間接照明は調光制御され、昼光により十分な明るさが確保される場合は消灯・減光されます。さらに下向きの直接照明は人検知センサーによって人がいるところのみ照射することが可能です。この調光制御によって使用電力の削減目標を達成することができました。
図6 ZEB実証棟内の採光状況
図6 ZEB実証棟内の採光状況
さまざまな取り組みによって、弊社のZEB実証棟では2014年6月の運用開始から2015年5月までの1年間で、エネルギー消費量は一般的な建物の4分の1程度となる463MJ/m2・年、創エネルギー量は493MJ/m2・年となり、建物単体での年間エネルギー収支ゼロを達成しました。ZEBの達成は国内都市部における単体建物として初であり、世界的にも希少な先進事例です。
今回のプロジェクトへの最適化技術の適用にあたっては、最適化環境構築コンサルティングをご利用いただきました。ダイレクトインターフェースの準備がないソフトウェアとの連携の場合には、大変有効かと思いますので新たなテーマに取り組まれる際には、ぜひまたご検討ください。
省略

このインタビューの詳細は季刊情報誌IDAJ news vol.83でご覧いただけます。
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