IDAJ

Case Study解析事例集

仁科工業 様(IDAJ news vol.94)

油圧制御機器の原価低減や性能向上のためにANSYS Fluentをご活用

仁科工業 株式会社 技術部 先行開発グループ 様
IDAJ news vol.94お客様紹介コーナーより抜粋
2019年1月

省略
CAEは、いつごろから取り組まれていたのでしょうか。また、この度CFDを導入されたきっかけをお聞かせください。
10年以上前から構造解析に取り組み、社内でノウハウや知見を蓄積して技術構築してきましたが、流れ計算には、設計者自らが簡単に、かつすぐさま利用できるように内製ツールを利用していただけでした。ただ、近年になって、お客様からの開発期間短縮や開発コスト削減、最適設計化などの様々な要求にお応えするためには、小さな工夫の積み重ねではなく、もう少し大きな変更を加えるべきではないかと考えるようになりました。そこで、これまでの比較的簡単な計算やCAEを適用しながら試作して検証を繰り返す手法から、構造解析や流れ計算以外のCAEも適用して設計フローを見直すことにしました。
そんな中で、とある展示会でANSYS Fluentの紹介を受ける機会があり、その場で実現したいことをお伝えしたら、当時目標としていた第1ステップはクリアできそうだとわかりました。考えていたことが実現できるのであれば、差し迫ったお客様からのご依頼もあったので、導入は少しでも早いほうが良いと考え、IDAJさんにいくつかのベンチマークを依頼しながら並行してA NSYSFluentの利用トレーニングを受けるなど、CFDの早期立ち上げに向けて、迅速に動いたことを覚えています。汎用CFDツールの未経験者である弊社に対して、初期モデルの作成から、その初期モデルを利用した操作トレーニング、ツール導入までをお任せできたので、導入後はすぐに操作にも慣れることができました。
社内では、決して安い投資ではないことから、導入後の開発リードタイムの短縮や工数・開発費削減の効果期待値、CFDの結果から得られる圧倒的な情報量を併せて示すことで、導入の承認を得ることができました。

試作数・工数の削減と、ワーストケースの回避にも利用

CFDを適用されて、その効果はいかがでしょうか。
これまで使用してきた内製の流れ計算ツールでは十分な精度が得られず、傾向を確認する程度にしか使っていませんでしたが、今回のANSYS Fluent導入にあたって、解析結果と実測の合わせ込みを行いました。弊社は、お客様からのオーダーに合わせて既製品をベースに個別開発することが多く、シミュレーション精度をあらかじめ高めておくことは開発期間短縮のために大変重要です。
そこで、複数のケースを準備し、誤差範囲±3%を目標に合わせ込みを実施しました。最終的には、平均-1.4%と良好な精度が得られていますので、今後の解析ケースへの適用も可能だと考えています。
図1 解析結果と実測値の合わせこみ
また、設計公差の上下限値の組み合わせによって想定されるワーストケースの見極めと、その回避にも利用できる点は非常に便利だと思います。今までの開発フローでは、多くの検討の末にできあがった試作物でも、数か月にわたるワーストケースの試験中に不良条件が見つかり、初めからやり直し・・・ということもありました。
お客様の要求仕様に沿った性能を事前に検証していますので、試作が減り、試作品ができあがるのを待つ時間も不要となったため効率的に開発コスト全体を引き下げることもできていると思います。
長年にわたって構築してきた、試作と評価・試験のループによる開発フローでは、数か月以上かかることがありますので、開発期間の短縮は社内にもアピールしやすい、わかりやすい効果ですね。
これまでは、経験や知見によって「ここにはこんな圧力がかかっているから、こうするのが良いだろう」というアイディアを元に要求を満たす製品をご提供してきましたが、CFDを導入することによって、要求範囲に設計範囲がどの程度おさまっているのかということを、定量的に確認できるようにもなりました。
効果が出始めているようで、本当にうれしく存じます。今後は、大きな成果に結びつくような新しいご提案もさせていただきたいと思います。
さてここからは、CFDの適用事例をご紹介いただけますか。
こちらは、油圧バルブ内でオイル流量を変化させたときのポペットの挙動を計算した事例です。
油圧バルブは、ポペットに取り付けられたバネの復元力と、ポペット表面にかかる圧力による荷重のつり合いによって開閉し、流量に応じてリフト量が変わるような機構になっています。当然、事前に要求した開度となるように机上で設計を行っていますが、実際に製品に取り付けた後に、仕様通りの動きをしているかどうかは、圧力や流量などの実測値から推定するしかありませんでした。そこで、オイルの流量を変化させたときに、ポペットが実際にどのような挙動を示すのかを把握するため、ANSYS Fluentを用いてオイルの流れを可視化しました。ANSYS Fluentには物体の移動を取り扱うための移動変形メッシュ(註:MDM)の機能が搭載されていますが、非定常解析が必要なため、計算負荷が高いことが設計を進める上でボトルネックとなっていました。
この問題を解決するため、リフト量を変更した定常解析を複数ケース実施し、リフト量ごとにポペット表面にかかる圧力による荷重を求めた上で、ポペットに取り付けられたバネの復元力と比較することで、つり合いの位置にあるときのリフト量を推定するという手法を考案し、解析を行いました。
図2 ポペット表面の圧力分布と流れ場の様子
図3 リフト量と荷重の関係
このとき、ANSYS Fluentに付属しているモデリングツールであるANSYS SpaceClaim Direct Modelerを用いてリフト量をパラメータ化し、ANSYS Workbenchのパラメトリックスタディの機能を使用することで、効率的に解析を行うことができました。
ANSYS Fluentの高度な物理モデルはもちろんですが、ANSYSWorkbenchを使うことで解析作業が飛躍的に効率化できるというのもANSYS CFDソリューションの大きな魅力だと感じています。
図4 ポペットリフト量のパラメータ化
図5 ANSYS Workbenchの解析フロー
事例のご紹介、誠にありがとうございました。ANSYS Fluentを使ったCFDの本格的な立ち上げから約2年が経過いたしましたが、今後はどのような展開をお考えでしょうか。
現在は、先行開発グループが製品開発や設計管理の担当者から依頼を受けてCFDを実施しています。お客様からCFD結果の提出を求められることも増えてきたので、平日の夜間や休日にもANSYS Fluentを使って計算しており、稼働率はかなり高いほうだと思います。ただ、計算に追われることが多くなり、せっかくシミュレーション技術を高めても、解析結果から得られた情報で性能を評価し、新たに何らかの提案するところまでは踏み込めていないのが課題です。
今後は、各部からの依頼に迅速にこたえるためにも、ユーザーを増やしたり、業務フローを見直すなどして、CFDをさらに有効活用できるようなアプローチを検討したいと思います。そしてその先には、現在は単品部品などの限られた範囲内で行っている解析を、アッシーモデルへ拡張するなど、CFDの適応範囲を拡げていきたいですね。
また、電磁界シミュレーションにも新たに取り組み、解析対象も広がっていることから、将来的には、さらに多くの弊社の製品開発にCAEを適用したいと思います。
省略

このインタビューの詳細は季刊情報誌IDAJ news vol.94でご覧いただけます。
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