Aras InnovatorPLMプラットフォーム
運用例
1D・3D CAE(シミュレーション)データ管理
~SPDMによる開発業務の最適化・自動化~
これまで大半が属人的だったシミュレーション手順やモデル作成、結果データ保管などの運用ルールをいかにして統一するか。作成したモデルを共有し、業務効率化を図るにはどうすれば良いのか。シミュレーション業務プロセス見直しとデータの適切な管理・活用を実現した運用例です。
導入前の課題と要望
- シミュレーション実行時に前提条件や検証範囲があいまいで、多くが担当者の判断に委ねられおり、統一した基準が無いことで解析結果や評価内容がバラつく。
- 結果データ、関連するデータが個人管理となっているため、他者が参考にすることが難しく、過去に同じような検討をした事案があっても一から手順を踏んで作業をしている。
- 過去のデータを再利用したいが、結果に至る検討情報が残されていないため判断する情報が足りず流用できない。
- データ間の紐づけが無いことで流用できず、一からシミュレーションを実行するため、時間が短縮されない。
- 必要な情報を収集するのに時間がかかり、モデル整備等の実行に必要な作業時間が不足し、スケジュールの遅れや業務量過多となっている。
- 複数のパラメータ条件で計算したくても時間的制約で実行できる件数が限られ、最適な設計案探索としては疑問が残っていた。
- 不具合対応時に、実験結果とシミュレーション結果が紐づいて管理されていないため、過去情報の確認に時間がかかる。
- シミュレーションに使用した3DCADデータとの関連がわかりづらい。
- 複数保有しているCAEソフトウェアのデータを一つのプラットフォームで管理したい。
- 既に運用しているPDM・PLMシステムを改修して、シミュレーションデータの管理を実現するには、多額の改修費用がかかる。
- 外部に改修を依頼するには都度社内申請が必要で、時間も要するため自社で対応したい。

人によるばらつきを無くすためにはモデル作成方法といった手順や、シミュレーション結果の評価基準などをルール化(=標準化)することが必要です。またルールに沿って業務を正しく進められるようにシステムを構築することで、誰もが最適なプロセスで業務を進められるようになります。

課題解決に向けて
シミュレーションのプロセス標準化とシステム化を実現し、運用の定着を図るには、業務プロセスを標準化・可視化する、標準化した業務をテンプレート化する、テンプレートとデータ管理をシステム化して実業務へ適用し運用を開始する、業務の変化に合わせてシステムを改修するといった4つのフェーズが必要です。

フェーズ1:業務プロセスを標準化・可視化する
現状業務を精査し、属人化されている業務フロー・判断基準を明確化します。その上で適切な標準プロセスを構築し、資料化する事で誰もが分かるように可視化します。
フェーズ2:標準化した業務をテンプレート化する
フェーズ1で標準化した業務をテンプレート化することで、統一された手順、基準で業務が進められる仕組みにします。テンプレート化にはAras Innovatorの標準アプリケーションである[Program Management]をベースとして利用します。 [ Simulation Management ]と組み合わせて使用すると、標準的な解析業務における一連の流れをテンプレートとして提供するシステムを構築することができます。
フェーズ3:テンプレートとデータ管理をシステム化して実業務へ適用し運用を開始する
フェーズ2で作成したテンプレートからシミュレーションデータを登録・管理するシステムを構築します。シミュレーション結果ファイルや関連する参照データを業務プロセスに紐づけて管理する仕組みとすることで、正確な情報管理と後から実施内容のトレースが容易なシステム化を目指します。その後、本格的な業務へ導入し、実務利用を通して運用上の問題点や改善が必要な内容を確認します。
結果データ登録時には境界条件等の情報をCAE結果ファイルより抽出、管理に必要な属性情報の入力などといった登録者の負担となる作業を減らすためのカスタマイズを実装します。さらに属性情報は検索値として活用されますので、モデル流用を促進し、業務効率化に寄与します。
フェーズ4:業務の変化に合わせてシステムを改修する
実務での利用と並行してシステムの改修を行います。様々なCAEツールに対応したコネクターを利用すれば、段階的に対象範囲を拡大することができます。またAras Innovatorはオープンアーキテクチャ、ローコードのため、お客様ご自身で画面構成の変更や、属性項目の追加・変更が簡単に実行でき、業務に合わせた柔軟な対応を実現します。

導入の効果
- これまで属人的だった解析手順や前提条件、結果判定基準等が統一されることで、解析品質の向上、均質化を実現
- マップ、ライブラリや設定パラメータなどをマスターデータとして管理・運用できるようになり、解析の準備時間を削減し、誰もが正しい手順で業務を遂行
- 誰が、いつ、どのデータを使用してシミュレーションを実施したかわかる
- 過去のモデルを様々な条件で検索して再利用できるようになり業務効率が向上
- シミュレーション結果データの共有だけでなくパラメータ設定の根拠、結果判断のロジック等の情報や実験結果を一元管理することで、ノウハウを蓄積し技術伝承を仕組化
- システム改修が可能な体制を自社内で構築



MBD・MBSEの運用
製品開発プロセスの変革をMBD(モデルベース開発:Model Based Development)で実現するには、モデル化の手法開発や業務の変革と同時にそれを正しく製品開発の中で遂行できるようにするための取り組みが必要です。シミュレーションタスクや大量のモデルデータが正しく管理されず流用が進まない、人によって判断基準が異なるため報告結果が変わるといった状態では、本来MBD・MBSEで得られる効果が限定され、時には別の弊害を引き起こすことにもなりかねません。
導入前の課題と要望
- 機能設計と形状設計のプロセスが分断されているため相互理解が進まず、製品で実現したい目標仕様がなかなか達成できない。
- 開発プロセスとモデルが紐づいておらず、作成者であっても後日に関連データを探すには時間がかかる。
- データは個人のPCで管理されており、他者が参照・流用できない。
- データ保存は共有フォルダで運用しているが、フォルダの分け方、ファイルの命名ルール、履歴の残し方などの保存ルールが明示されていない。
- 要求文書とCADデータ、CAEデータ、検証報告書、実験測定データといった様々な成果物のデータが紐づいておらず、トレーサビリティが確保されていない。
- 複数保有しているCAD(2D、3D)やCAE(1D、3D)、システムモデル(SysML)のデータを一元管理したい。
- プロジェクト毎の進捗状況がわかりにくく、タイムリーな対策が打てずスケジュールが遅れる。
- 技術継承が進んでおらず、担当業務がスキル依存で属人化している。
- 段階的に導入したい。

MBD・MBSEを推進するためにもプロセスの標準化と担当者がプロセスを誤りなく進められるシステムの構築が重要です。加えて複数のソフトウェアを用いて業務が進行するため、生成される大量のデータを取り出しやすく管理・流用するためのシステムを構築します。

課題解決に向けて
MBD・MBSEを推進するために運用の定着を図るには、業務プロセスを標準化・可視化する、標準化した業務をテンプレート化する、テンプレートとデータ管理をシステム化して実業務へ適用し運用を開始する、業務の変化に合わせてシステムを改修するといった4つのフェーズが必要です。

MBD・MBSEの運用に対してAras Innovatorを適用する場合は、標準アプリケーションの[Program Management]、[Requirements Engineering]、[Systems Architecture]、[Product Engineering]、[Simulation Management]をベースとして、[CAD Connector]オプションを追加してCADデータ管理も対象とします。プロセスごとに導入を進め、標準アプリケーションの機能で自社運用に合わない部分はカスタマイズを加えて業務への適用性を高めます。結果データを成果物としてプロセスに紐づけて登録する仕組みを作り、履歴管理を含めたトレーサビリティの確保を実現します。
広範な業務をカバーするAras Innovatorの標準アプリケーションをベースとすることで、実業務へのスムーズな導入が可能です。またサブスクリプション契約にはすべてのアプリケーション使用権が含まれ、拡張にあたって追加コストは発生しません。(※)
(※)コネクター等の一部オプション製品を除きます。また、利用者数に応じたサブスクリプション契約が必要です。
導入の効果
- 必要なデータや参考情報を探す時間を大幅に削減。これによって生み出された時間を実業務に充てられるようになり、プロジェクト遅延が減少。
- 他者の作成したモデルを流用できるようになり、流用率が向上したことで後工程でのトラブルが減少。
- 設計変更時の影響範囲が簡単に把握できるようになり、調整や対策検討がしやすくなる。
- プロジェクト単位で成果物を紐づけて確認できるため、トレーサビリティが向上。
- テンプレートを活用して検討の抜け漏れを無くし、成果物の品質が向上。
- プロジェクトの進捗状況が視覚的に把握できるため、先回りした対策検討が可能。

