GT-SUITEマルチフィジックス・システムシミュレーションツール
V2026新機能
GT-SUITE V2026は、設計・開発現場が直面する検討スピードの向上、設計品質の安定化、属人性の低減という課題に真正面から応えるために進化しています。生成AIを活用したGT Intelligence Studio、刷新されたユーザーインターフェース、そして電動化・脱炭素・システム統合といった各分野での大幅な機能強化によって、GT-SUITEは“一部の専門家のためだけのMBD”から“組織全体で活用するMBD”を目指します。
GT Intelligence Studio
1.GT Intelligence Studio
GT-SUITE専用に設計・学習された生成AIであるGT Intelligence Studioファミリーをリリースします。GT-SUITE V2026 Build1のリリースから提供されるのはAI.advisorで、これはGTユーザーの日常業務を支援するために特別に設計・訓練されたAIアシスタントです。この革新的なツールは、モデル構築や設定、結果解釈において、経験豊富なエンジニアに相談するような感覚で利用でき、24時間いつでもその場で的確なアドバイスを提供します。また、あらゆるレベルのユーザーにパーソナライズされたガイダンスを提供することで、検討スピードの向上と設計品質の底上げを同時に実現させます。モデリングに関する質問への即時回答、複雑なクロスドメイン課題に対する専門的なアドバイス、トラブルシューティングを効率化するインテリジェントな診断支援などがあります。ユーザーの知識レベルに合わせて調整した最適なテンプレート、効率的なワークフローを提示することで、より速い意思決定を促進し、プロジェクトのスケジュールの遅延を極力排除します。
機械学習
1.より高速な機械学習トレーニング
分散コンピューティングを活用して、複数のメタモデルを同時に学習させ、メタモデルの作成時間を大幅に削減します。シミュレーションの限界に挑戦したこの機能強化によって効率的かつ精密にバーチャル試験を拡張することを可能にします。
ローカルマシンでMachine Learning Assistantを使用すると、最大4つのメタモデルの並列トレーニングが自動的に処理されます。
2.メタモデルのFMUへのエクスポート
メタモデルは.fmuファイルにエクスポートでき、他のモデリングツールへの統合が容易です。FMUはツール統合を効率化するために、メタモデルのFMUは他のチームとの協働を容易にするシンプルなplug-and-playモデルとして機能します。
GUI
1.新しくなったUX
統一されたインターフェース、改善されたナビゲーション、一貫したワークフローによって使いやすさが格段に向上しました。再設計されたテンプレートライブラリとオブジェクトライブラリは、モデルの整理とリソースへのアクセスを効率化し、強化されたWizardはモデル作成時に明確な指針と洞察を付与します。改善されたRun Simulation Wizardでは、最適な実行方法を自動的に選択する新しいスマートモードを導入し、マルチケースモデルのシームレスな分散実行を含めて、手作業を最小限に抑えています。
性能最適化によってメモリが大幅に向上し、大規模モデルのRAM使用量は 従来型の二分の一から四分の一へ削減されました 。かつては10〜15GB程度が必要だった大規模モデルは、3〜5GBでスムーズに動作し、モデルの初期化と実行が大幅に加速します。
これらによって、ツール操作よりもイノベーションに集中して取り組んでいただけるようになりました。
2.Compoundオブジェクトの強化
複合テンプレートを次のレベルに引き上げるための強力な新機能、Pythonを使用するCompoundオブジェクトを導入しました。Compoundオブジェクトは、静的なマップトポロジーに限定する必要はありません。統合されたPythonスクリプトを使って、ユーザーが定義した属性に基づいて内部構造を動的に修正し、リアルタイムで適応するCompoundオブジェクトを作成できます。これにより、最小限の手作業で高度で応答性の高い複合モデルの構築が可能になります。
<利用例>
- 可変離散化制御
- 再現性の高い燃料電池用の加湿器
- 複数の性能を持つ熱交換器
3.GT-Playの機能を拡張
GT-PlayはGTのWebベースのシミュレーションプラットフォームで、CAE専任者だけでなく、組織全体にモデルベースエンジニアリングの力を拡張する役割を担います。さまざまな経験レベルを持つユーザーが、GTエキスパート(モデルアーキテクト)によって構築された、GT-SUITEシミュレーションモデルのライブラリに、任意のウェブ接続デバイスから直接アクセスできますので、高価なハードウェアや複雑なソフトウェアインストールは不要です。
特に今回のリリースでは、目的関数、制約条件、設定パラメータを定義しユーザー自身が最適化計算を設定できるようになり、ウェブ上でデザインのトレードオフを探ることがこれまで以上に容易になりました。 機械学習やメタモデル、異常検出、分類を含むサポート範囲が拡大したことによって、リアルタイムの洞察が可能になります。モデルアーキテクトでは単一モデルの複数バージョンを管理できるようになり、モデル更新を効率化、どのバージョンを利用するかをチームがコントロールできるようになりました。新しいバージョンが公開されるとユーザーに通知され、モデルアーキテクトは必要に応じて古いバージョンへのアクセスを許可または制限します。新しいレポーティングツール、プロット、データセットのコンパイル用スクラッチパッドと組み合わせて、アーキテクトとアナリストの両者が効果的に協力し、より深い洞察を迅速に提供できるようにします。
船舶
1.船舶分野のシステムシミュレーション
海洋輸送業界は2050年までに、温室効果ガス(GHG)排出のネットゼロに向けて取り組みを強化し、新造・既存船舶の両方で代替エネルギーキャリアや船内エネルギー変換技術の採用・検討を推進しています。
この取り組みをご支援するため、推進システムのOEMや造船設計者が製品を統合し、システム効率を最適化できるよう、GT-SUITEはいくつかのソリューションを進化させました。これには穏やかな海況または中程度の海況での業界標準の船体抵抗モデルや、逆問題最適化ソリューションにおける複雑な推進システムへの対応を強化し、1週間の航海をわずか数分でシミュレーションする技術などが含まれています。
2.舶用排気スクラバー
GT-xCHEMを使って、大型舶用エンジン向けの硫黄酸化物(SOx)排ガス浄化装置を、効率を損なうことなく設計・最適化することができます。この進歩の鍵は、産業用カウンターフロースクラバー(向流式洗浄塔)の動作を正確に表現する新しい組み込みのAbsorptionColumnテンプレートにあります。このモデルは、排気ガス流への液体噴霧注入を捉え、上昇するガス流に逆らって液滴が重力で落下し、気液接触と反応効率を最大化します。この高精度なシミュレーションによって、SOx除去性能を定量化し、運転条件を最適化することができるようになります。
燃料合成、CO2回収
~GT-xCHEMによる高度なモデリングを通じて効率的な燃料合成と高性能CO2回収を推進~
1.グリーン燃料合成
GT-xCHEMでは、原子炉設計の探索や電気化学プロセスの概念評価において、グリーン燃料生産プロセスをシミュレート・評価することができます。
ElectrolyzerStackテンプレートは、H₂OとCO₂を合成ガスに同時変換する過程を、表面積、セル数、材料特性などのパラメータを正確に設定しながら、共電気分解システムの詳細なシミュレーションを可能にします。このモデルでは電気化学反応とH₂/CO比を支配する水と気体シフト平衡を捉え、入口ガス組成を変化させつつ、温度依存性の反応速度論に基づいて流出物質を予測します。またGT-SUITEの熱・電気モデルとシームレスに統合され、熱伝達やスタック内温度分布、オーム損失、活性化損失、濃度分極による電圧損失を含む電気的性能のシミュレーションにも対応しています。さらに下流行程においては、沸騰水型原子炉などの複雑な反応器内で熱伝達や相変化現象を考慮しながら、原料ガスからのグリーン燃料合成をモデル化することができます。
この柔軟なGT-xCHEMのシミュレーション機能によって、個々の独立したコンポーネントのシミュレーションだけでなく、統合プロセス全体をシミュレーションすることが可能です。
2.CO₂回収
CO₂削減目標を達成するには、炭素回収技術を探求・比較・最適化するための信頼性の高いプロセスモデルが必要です。GT-xCHEMには、吸収カラムや気液膜分離用など、すぐにご利用いただけるテンプレートがあり、開発サイクルの短縮を支援しつつ、有望なアイデアの実用化を加速させます。
AbsorptionColumnテンプレートを使用すると、構造化充填層を液が下向きに流れ、ガスが上向きに上昇する向流配置の充填塔への逆直接液供給をシミュレーションすることができます。これにより液体中のガス溶解と吸収を正確にモデル化できるため、水溶性中のアミンによるCO₂捕捉挙動を捉えるのに適しています。
また、対流のシェル&チューブ構成を特徴とする新しいMembraneSeparatorテンプレートが導入されました。このテンプレートは、ガスの溶解、拡散、液体電解質への吸収のモデリングを支援し、選択的ガス分離の正確なシミュレーションが可能となり、次世代のガス分離戦略を探り、膜性能を最適化することができます。 MembraneSeparatorモデルは、開発元GT社とCPERI/CERTHのARTEMISラボとの綿密な連携によって生まれた成果で、産業的に重要な新たな概念に取り組む上で、研究と産業による相乗効果の重要性を示しています。
3.グリーン燃料の精製
石油・化学・プロセス産業において、GT-xCHEMは複雑なプロセスの最適化、コスト削減と製品品質向上に役立ちます。主な機能のひとつである「スタビライザーコラム(安定化塔)」は、価値の高い異性化ナフサ製品から軽質炭化水素成分を効率よく分離できる高度なシミュレーションを可能にします。新たに加わったスタビライザーコラムのサンプルモデルは、プロセス最適化の可能性を広げ、お客様の生産効率と品質向上を力強くサポートします。
また、v2026で採用されたNewton-Raphson解法により、多成分系や非理想的な混合物、厳しい運転条件下でも、高速かつ高精度で安定した計算性能を発揮します。
バッテリー
1.バッテリーの膨張
リチウムイオン電池は、充電・放電中に膨張し、電圧や劣化に影響を与え、極端な場合には機械的故障につながることがあります。GTのマルチフィジックスアプローチにより、電気化学領域と機械構造とを統合し、膨張によって生じるバッテリー構造への応力とひずみを捉えることができます。
V2026では、これらの相互作用をGT-AutoLion-3Dバッテリーモデルに接続した3D構造解析機能によって、高精度でモデル化できるようになりました。この手法はセル間の応力とひずみの分布を捉え、特に大規模なパウチセルをバッテリーモジュールに統合する場合に重要です。
2.バッテリーの劣化
GT-AutoLionには、バッテリー寿命や走行距離の延長に不可欠なバッテリー性能の長期劣化予測機能があります。V2026では、電解質溶媒の乾燥と活性物質分離(AMI)を考慮した新しい物理ベースの劣化メカニズムを追加されました。これらのメカニズムは、GT-AutoLionの劣化予測能力を向上させ、モデル構築プロセスの面では、AutoLion-1Dの自動キャリブレーション機能がカレンダー劣化のデータに合わせてモデルを自動でキャリブレーションできるようになりました。
3.HiLのGT-AutoLionモデル
バッテリー「プラント(システム全体)」を正確に再現することは、制御およびキャリブレーションシミュレーションを成功させる上で極めて重要です。GT‑AutoLion V2026では、バッテリーの設計・開発で使用されている予測電気化学(P2D)モデルを、そのまま制御とキャリブレーションの用途に適用することができます。
そしてこの度、GT‑AutoLionのP2DモデルをdSPACE Scalexio HiLシステム上で、100ミリ秒の固定タイムステップでオーバーランなしに動作させることに成功しました。このモデルは一切の改変や簡易化を必要とせず、バッテリー性能に関する信頼できる情報源として組織全体で共有できるほか、プロセス効率の大幅な向上にも貢献します。
4.バーチャルバッテリーテスト
GT‑AutoLionでのシミュレーションを活用してバッテリー性能、安全性、寿命保証の予測を行うことで、実機試験に比べて大幅なコストと時間の削減が可能になります。
シミュレーションで実際の試験を仮想的に再現するには、試験条件の正確な再現が重要です。たとえば、リファレンス性能試験(RPT)やハイブリッドパルス出力特性試験(HPPC)などでは、熱的境界条件、ソルバー設定、その他のモデル入力条件を複数組み合わせて検討する必要があります。
V2026では、「AnalysisProtocol」テンプレートを導入し、モデル設定プロセスを自動化しました。これにより、複雑な制御設定を行うことなく、迅速かつ一貫性のあるシミュレーション実行が可能になります。
モータ
1.新しい電動モータ設計ツール“GT-FEMAG Designer
GT-FEMAG Designerは、モータ設計エンジニアがモータ設計を迅速に反復できる、ユーザーフレンドリーで効率的なワークフローを備えた独立したモータ設計ツールです。以下のような複数のモータートポロジーをサポートしています。
- 磁石埋込型同期モータ(IPM)
- 表面磁石型同期モータ(SPM)
- 誘導モータ(IM)
- 巻線界磁型同期モータ(EESM)
- アキシアルギャップ型モータ(AFM)
ラウンド巻線とヘアピン巻線の自動巻き線レイアウトの生成、新しいダイナミックディスプレイの矢印ポインターを使って寸法の変化を即座に強調できるなど、よりインタラクティブで直感的な操作が可能になりました。
2.電動機ローターの構造解析
GT-FEMAGは、ローターコアとシャフトの間の圧入解析を行い、トルク伝達能力の評価やスリップ防止の検証を可能にします。この解析は、FEMAGテンプレート内に新たに追加されたワークフローによって実現します。ユーザーは、回転速度、温度、圧入量、接触タイプといったパラメータを入力するだけで、ソフトウェアが電磁解析と並行して構造解析を自動的に実行します。また、圧入力、遠心力、熱負荷などを組み合わせた複合荷重条件下におけるローター構造の健全性を評価することもできます。これにより、電磁トルク性能と機械的応力の最適なバランスを検討し、設計の信頼性と効率性を高めることができます。
3.電気領域でのユーザーエクスペリエンス
産業界全体で電動化シフトが進む中で、エンジニアが効率的かつ効果的にソリューションを開発するためには、もはやシミュレーションツールは欠かせません。GT-SUITE V2026では、電気コンポーネントの物理的な接続端子を表現した、直感的で新しいポートベースのアイコンを採用することで、モデリング体験をさらに強化しています。この新しいアプローチにより、シミュレーションモデルと実際のシステム構成との対応関係をより明確に把握できるようになります。
4.3相インバータのPWM構成
3相インバータにおいて、どのパルス幅変調(PWM)方針を採用するかは、ユニット全体の効率と出力信号品質に決定的な影響を与えるため、設計上の重要な検討事項です。GT-SUITE V2026では、さまざまなインバータPWM戦略を簡単に設定できる新しいテンプレートが導入されました。これによりインバータを制御するために貴重な時間を節約し、モデル構築時の潜在的な人的エラーを回避できます。
熱流体
1.電動モータの熱ワークフロー構築
空間的に離散され、高速で実行できる電気モータの過渡熱モデルを活用して、冷却方式の効率的な設計や温度分布、過渡運転中の局所的なホットスポットを評価することができます。GEM3Dに追加された新しいワークフローでは、2次元モータ断面を3次元に押し出すことで熱質量ネットワークを自動的に生成し、モデル設定時間を大幅に短縮し、手作業によるミスを排除します。この効率的なアプローチによって、モデルの整合性とシミュレーション精度が向上します。
2.GT-Auto-3DFlowの高速化
GT-Auto-3DFlowは、CFDの専門家ではないユーザー向けに設計されているため、GT-SUITEユーザーご自身で設計空間を迅速に探索することができ、どなたでも簡単に熱交換器を検討する際の不均一な空気流とそれが熱放出に与える影響の予測できます。
V2026ではメッシュとソルバーの設定の最適化、初期値の改善、ファンモデリングの強化によって精度が向上し、実行時間が短縮されました。また、作成済のシミュレーション用メッシュの再利用、メッシュの細分化ゾーンの定義などが可能になりました。
3.GT-TAITherm用にGT-Auto-3DFlowを活用
GT-Auto-3DFlowは、外部の気流に加えて内部の空気流をシミュレートします。V2026のGT-Auto-3DFlowは、GT-TAIThermキャビンモデル向けの強力で使いやすい3D CFDソルバーとして機能し、結果をEnSight形式でネイティブにエクスポート、3D流れ場を乗客快適性シミュレーションにシームレスに転送できるなど、キャビン快適性解析へも適用できるようになりました。
4.GT-CONVERGE 速度とロバスト性の向上
GT-SUITEで利用可能なもう一つの3D CFDソルバーであるGT-CONVERGEは、under-relaxation-basedのアプローチにより、定常状態計算の数値的安定性と収束効率が向上しました。これにより、シミュレーション時間は旧バージョンの 3倍以上に速くなり、特に、大規模かつ複雑なモデルに適用した場合の安定性が向上しています。 定常計算では、シミュレーションダッシュボードにランタイムモニターが追加され、ユーザーが収束の進捗をリアルタイムで追跡できるようになりました。
5.GT-TAIThermキャビンの計算実行フロー
乗員の熱快適性を評価するための、リアルタイムまたはニアリアルタイムで実行可能な高精度モデルが提供されました。これにより、乗員の熱的な知覚とHVACの運転および全体のエネルギー消費と直接関連付けて検討することができるようになります。またワークフローに追加された新しい自動化機能は、モデル構築工数とエラーの可能性を大幅に削減します。実行するケースを指定すると、スクリプトが自動的に3D CFDを実行し、必要な形式で結果を整理し、マッピングされた3次元空間モデルを構築します。このワークフローによって、CADジオメトリから完全な3Dリアルタイムキャビンシミュレーションへ迅速かつ簡単に移行でき、 大幅な時間短縮とシミュレーション誤差の大幅な削減を同時に実現できます。
6.二相流における空隙率相関式
固定式・移動式の両用途における冷凍システムへの効率性が求められる中で、システム性能の正確な予測はこれまで以上に重要です。これらの予測に影響を与える重要な要因の一つが、二相流における空隙率です。空隙率挙動を正確に捉えることで、密度や熱伝達、圧力損失、システム充填量の推定精度を大幅に改善することができ、最終的により信頼性の高いシステム性能評価につながります。安定的な組み込みの空隙率相関式に加えて、ユーザーによるカスタム空隙率計算モデルの実装が可能です。システム挙動をより高精度で評価し、コストのかかる実機プロトタイプテストへの依存を減らし、性能と省エネルギーの目標達成に向けた検討を加速させることができます。
7.流体物性評価
設計やサイズ測定の初期段階に流体物性の評価、試験データの検証などが必要なことがあります。新しい流体物性計算ツールを使用すれば、冷媒、液体、気体、混合物、さらには湿った気体含むあらゆる流体の情報を瞬時に取得することができます。各流体状態のデータは、圧力・温度等高線図、湿り空気線図、P-h/T-s図などの流体特性プロットと重ねて動作点を視覚的に把握することができます。
8.スクロール、スクリュー、ローリングピストンコンプレッサーのモデル作成機能
コンプレッサー設計の研究では、1次元シミュレーションを用いて異なる幾何学の熱力学的性能を評価することが重要です。可変壁厚(ハイブリッド)スクロールコンプレッサーであれ、新しいスクリューコンプレッサーローターであれ、対象をシミュレートする前にまず形状を前処理する必要があります。GT-SUITEの最新機能では、2次元または3次元形状から詳細なコンプレッサーモデルを構築することがこれまで以上に簡単になりました。
スクロールコンプレッサーでは2次元ジオメトリから直接的にモデル化することができ、設計の反復処理が高速化されています。さらに、壁厚に大きな変化を持つハイブリッドスクロールがサポートされ、圧縮特性だけでなく、潜在的な力やモーメントの不均衡を評価することができます。スクリュー機械の場合は、GT-SCORGを使って3次元形状から自動的にスクリューコンプレッサーモデルを構築できるようになりました。
さらに、ローリングピストンコンプレッサー専用テンプレートが追加され、チャンバー容積、表面積、ガス力を自動的に計算し、迅速なモデル開発が可能になっています。すぐにお使いいただけるように、このコンプレッサーの2つのサンプルモデル(統合されたマルチフィジックスモデルを含む)が追加されました。
燃料電池、電解装置
1.PEM燃料電池劣化予測モデル
スタックの寿命を延ばし、総所有コストを削減するには、燃料電池の劣化を最小限に抑えることが不可欠です。物理的なテストは1回の反復に数百時間かかり、その結果、燃料電池は破壊されます。シミュレーションによる劣化予測は時間を大幅に節約し、損傷した試作機の交換コストを削減することもできます。
陰極触媒層の分解および膜フッ化物放出の新しい物理モデルがGT-SUITEで利用できるようになりました。カソード触媒層は、プラチナの酸化、炭素腐食、溶解、オストワルド熟成など様々な劣化反応が起こる過程で時間とともに変化するプラチナ粒子半径の分布をモデル化します。これにより、温度、湿度、セル電圧などの動作条件に応じて電気化学的活性表面積(ECSA)が減少します。膜フッ化物放出モデルは、反応性ラジカルが時間とともに徐々に膜を薄くし、その結果、セルの性能を低下させるクロスオーバー率の増加を予測的に捉えています。これらのモデルによって、問題のある運転条件を避けて、燃料電池の信頼性を向上させることができます。
2.共電解
H2OおよびCO2を同時に合成ガス(H2とCO)に変換する共電解をモデル化する機能が新たに追加されました。通常は800℃で動作し、複雑な電気化学反応や生成ガス中のH2/CO比率を決定する水-気体シフト平衡を正確に捉えることができます。入口ガスの組成と温度を制御することで、さまざまな電気分解電流範囲にわたる出力物質の濃度を予測し、反応物濃度の違いがシステム性能に及ぼす影響を調査することができます。
ElectrolyzerStackのテンプレートは、GT-SUITEの熱モデリングおよび電気モデリング機能とシームレスに統合されています。熱インターフェースによって、スタック内の温度分布を詳細に解析ですることができます。電気インターフェースは様々な電気システムへの接続を可能にし、電気信号の方向によって電気分解モードまたは燃料電池モードのいずれかの動作が決定されます。
エンジン
1.代替燃料の予測燃焼モデル
ますます厳しくなる脱炭素化目標を達成するため、多くのエンジンメーカーでは水素、メタノール、アンモニアなどの非炭素燃料やネットゼロカーボン燃料の利用を検討するなどして、炭素排出削減を図っています。GT-SUITEはこれらの新燃料の予測燃焼モデリングを支援するために、V2025以降、新しい層流火炎速度モデルとノッキングモデルを導入しました。V2026でも引き続き、水素混合燃料用の新しいサブモデルとして以下の新モデルが導入されました。
- V2025 Build2 - 天然ガス+水素混合燃料用の層流火炎速度モデル
- V2026 - アンモニア+水素混合燃料用の層流火炎速度モデル
- V2026 - 天然ガス+水素混合燃料用のノックモデル
天然ガス+水素混合燃料の2つのモデルは、水素含有率0%のデータも用いて開発されているため、特にメタン数の低い天然ガス混合気の場合、水素混合を行わない天然ガス混合物の燃焼モデル精度向上にもご利用いただけます。
2.気体直噴の燃料成層化を予測するための高速3次元輸送モデル
水素エンジン開発の初期ではポート燃料噴射が主流でしたが、現在では多くのエンジンメーカーが性能向上と早期着火や逆火などの異常燃焼事象軽減のために直噴への移行を検討しています。
水素直噴に伴う性能メリットを最大限に引き出すには噴射タイミングを遅くすることが必要となるため、シリンダー内の燃料層上分布とそれに伴う燃焼率、排ガス生成への影響をモデル化することが重要です。直噴水素エンジンの予測燃焼モデルを支援するため、SITurb燃焼モデルにいくつかの新しい成層化オプションを導入しました。これには3次元混合気流動とスカラー輸送モデルが含まれ、燃焼中の各時間ステップにおける火炎面の燃料分布を予測できるため、燃焼速度の向上とNOxの予測精度が向上します。
3.リアルタイム検討(Hils利用)のためのエンジンモデルのより効率的な変換
エンジンメーカーや制御を開発する企業が制御キャリブレーションプロセスの効率向上を模索する中、GT-SUITEの詳細なエンジンモデルからリアルタイム対応モデルGT-POWER-xRTへの変換プロセスにおけるボトルネックを引き続き検証しています。その結果、GT-POWER-xRTモデルの変換ツール他が改善され、リアルタイム対応エンジンモデルが必要な車両やその他のモデリングシナリオに活用されています。
- バーチャルセンサー:XCPHarnessを有効にすると、正確なリアルタイム同期をサポート
- xRTコンバーター:動作が速くなり、より多くのシナリオをカバーするための手動の修正を削減
- Compoundオブジェクト:Compoundオブジェクトの適合性チェックの追加
- FMUエクスポート:外部コンパイラなしでもFMUとしてモデルをエクスポート
- FMUインポート:GTモデルとサードパーティモデルの簡単な統合
機構
1.ベアリングの油膜と3D接点における摩耗モデリング
摩耗による劣化は、従来のシミュレーション能力を超えた、数日から数年という長期間で検討しなければなりません。そこでこの課題に対処するため、摩耗の進行をモデル化するための革新的な反復シミュレーション手法を開発しました。この新しい摩耗モデリングフレームワークには、 Archard’s摩耗法則を採用し、モデルを連続的に反復実行することで、界面における段階的な劣化をシミュレーションします。ステップごとに摩耗の影響が蓄積され、摩耗速度に応じて時間ステップサイズが動的に調整されます。急速な摩耗では小さなステップが、遅い劣化プロセスでは大きなステップが自動で適用され、長時間の過渡連続計算をすることなく、ゆっくりと進行する摩耗メカニズムを長時間の運用期間にわたって実用的にシミュレーションすることが可能です。
独立したWearAnalysisテンプレートをモデルに追加し、「WearProperties」参照オブジェクトを特定のトライボロジーコンポーネントに適用することで、摩耗シミュレーションを簡単に実装できます。包括的な「WearAnalysis」テンプレートは、ジャーナル/スラスト軸受やピストン軸受、さらに3次元分散接触のすべての軸受モデルとシームレスに統合されます。このソリューションは、高度なPythonベースのユーティリティを備えた以下の4つの柔軟なシミュレーションモードをご提供します。
- 新しい摩耗シミュレーションの開始
- 中断した実行の継続
- 指定した時間点から修正された荷重サイクルでの再開
- 摩耗履歴の特定の時点に関する詳細な結果の生成
このシステムは、摩耗の段階ごとに接触面間の表面粗さやクリアランスをインテリジェントに更新し、時間経過に伴う部品の形状変化をリアルに再現します。高度な可視化機能によって、部品のライフサイクル全体を通して摩耗荷重、深さ、表面粗さの変化などの重要なパラメータを追跡できます。このソリューションはクランクシャフトのメインベアリングなどの用途でも力を発揮し、時間経過に伴うエッジの摩耗進行や表面特性の進化を明確に示します。OpenMPやIntelMKLによる並列化にも対応したこの強力な新機能によって、コンポーネントの耐久性、メンテナンス間隔、設計の最適化について十分な情報に基づいた意思決定を行うことが可能となり、業界における長期的な性能予測や信頼性工学への取り組み方を一変させます。
2.FSIソリューション ~スクロールコンプレッサーの漏れ予測~
過去数回のバージョンで、スクロール構造に正確に圧力を適応できるチャンバーマップを生成するための機能を改良し、スラスト軸受の両側の弾性変形を捉えることで、油膜厚さ、荷重分散、傾斜効果をより正確に表現できるようになりました。
これらを、柔軟な接触解析ソリューションと構造熱変形と組み合わせ、まず半径方向・円周方向に変形に応じたクリアランスを抽出することで、スクロールコンプレッサーの漏れモデルを実装しました。スクロール間の変化する接触ギャップをチャンバーマップ上で照合し、漏れが発生するチャンバーの組み合わせを特定することが可能です。
3.シャフト用スピードコントローラー
シャフトのねじり振動を正確にモデリングするには回転速度変動の適切な表現が欠かせません。ただし従来の「Speed」モードでは、瞬時速度を一定に固定するため、この挙動を表現できませんでした。このアプローチは、ねじり振動が平均値を中心に速度が変動する現実の挙動とは矛盾しており、自然な振動を防いでシャフトを人工的に剛性化しています。
現在の回避策としては、「Load」モードを使用して、目標平均速度を維持するには外部負荷トルクを調整し、PIDコントローラーを実装して手動で調整する必要がありますが、このプロセスはセンシングやアクチュエーター信号の設定が必要となり、シンプルなモデリング作業に不必要な複雑さを追加しています。そこでV2026では「ControllerShaftSpeed」が導入されました。これはサイクルを通じ、目標平均シャフト回転軸速度を維持するために特別に設計された高度なテンプレートです。このソリューションによって、手動のPIDコントローラーの実装や調整が不要となり、速度制御が必要なシャフトに単一のテンプレートを接続するだけで、モデリングプロセスを劇的に簡素化することができます。
システムはシャフト慣性を自動的に感知し、初期トルク推定値を計算し、初期サイクルに一定速度で運転することで最適なPIゲインを自動チューニングします。
車両
1.天候条件による実際の運転ルート
自動車業界では、天候とそれに対応するキャビン快適性の要件が、電動化車両のエネルギーを大きく消費することはよく知られています。GT-RealDriveは、外部の熱データを手動でインポートすることなく、走行時における高度なキャビンの熱快適性シミュレートすることができるようになりました。高度な統合車両熱管理シミュレーションのための正確な境界条件を提供するために有用な、太陽輻射と過去の気象条件の両方のデータが備わっていますので、環境が実走行時のエネルギー消費に与える影響検討の効率化にお役立ていただけます。
またGT-RealDriveでの実際の走行ルートの生成・再現が、V2026ではかつてないほど簡単になりました。GT-RealDriveで出発地・目的地・経由地の位置を定義できるだけでなく、GoogleマップのURLを入力するだけで、GT-RealDriveが対応するルートを自動的に生成します。さらに、各種車両向けのルート生成機能が拡張され、スクーターもこれに含まれるようになりました。
2.レーシングラップタイムシミュレーション
高性能レーシングカー開発およびレーシングプログラムは、今でも推進システム開発の試験場としての役割を担っているため、ラップタイム性能は高性能レーシングカーの性能を示す重要な指標として頻繁に挙げられます。V2026では、車両ダイナミクスにおけるラップタイムシミュレーションのためのマルチラップ機能が改良されました。コースはGPSデータからインポートするか、曲率テーブルから作成し、クローズドサーキットでの周回走行を設定することができます。
システム統合
1.コンパイルなしの複数のオペレーティングシステムに対するFMUサポート
GTモデルのクロスプラットフォームエクスポートは、Windows、Linux、リアルタイムOSを同時にサポートするマルチOSのFMUファイルを構築することで、コンパイラが不要です。同じ原理を用いて、GTモデル内でLinuxとWindows FMUの両方のファイルを保持できるようになり、シームレスなオペレーティング・システムのサポートが可能になります。
2.FMI 3.0 テーブルデータ交換
FMIテーブルデータは、GTでのFMUのインポートとエクスポートにおいて、FMI V3.0で交換可能になりました。
3.Simulinkユーザー向けの高度データ管理
Simulink用に展開された「ブラックボックス」GT MEXモデルのエンドユーザーは、SuperParametersの編集、方程式の修正、外部データの更新などの高度なモデル管理機能を、GTをローカルインストールすることなく(※)、利用できるようなりました。
(※)GTのネットワークインストール要
(本ページに掲載している情報・画像・動画はGamma Technologies社よりご提供いただきました。)
