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Solutionソリューション

材料設計

材料機能設計

材料設計における問題点

製品はそれを形作る材料がなければ存在し得ません。その材料も何でもよいわけではなく、その製品に最も適した材料を選んで作られます。当たり前の話ですが、モノづくりでは材料選びが重要で、モノづくりの進化と材料の進化とは一心同体であり、切り離して考えるものではないはずです。
ところがモノづくりは物理学との関連が強く、コンピュータの進化とともに解析技術とCADも進化し、今では解析専任者だけに任せるのではなく、設計者自ら解析技術を利用してモノづくりを進めるやり方が普及してきています。一方、材料づくり、または材料設計に目を向けますと、特に有機材料や高分子材料において新しい材料を作るには、掛け合わせ、混ぜ合わせてできたものの物性を測定し、使えるかどうかを判断するという試行錯誤の連続というやり方が多いように感じます。このやり方は、まず試作品を作ってみなければならないという観点では効率的とは言えません。しかしこのようにせざるを得ない理由がありました。材料の設計とはいわば非常にミクロなナノスケールの分子や原子の量子化学的な反応の結果を予測するということです。それを解析するにはスーパーコンピュータが必要であったり、専門性の高い量子化学計算や第一原理計算が不可欠で、汎用的に使えるソフトウェアも多くないという状況にあったわけで、モノづくりにおける有限要素法の普及などに比べると困難な道であると言えるでしょう。

材料設計におけるCAE活用のメリット

歴史的にはそんなに新しくありませんが、近年、均質化法と呼ばれる解析方法が注目されています。これはミクロスケールで見ると非均質的であっても、モノづくりで考えるようなマクロスケールでは均質と考えて差し支えない材料の物性を予測する方法です。これに適用する材料としては、例えばあらゆる製品に使われている繊維強化プラスチックであったり、多孔質材料のようなものです。これらの材料の物性を解析だけで予測できればいちいち試作品を作る必要がなくなり、材料設計が大幅に効率化され、かつ良い性能の高い材料を作り出せるという期待が持てます。また、解析による材料設計ですから、材料設計に失敗しても誰にも迷惑は掛かりません。それどころか最適化ツールなどと組み合わせることによって、これから作ろうとしている製品に最も適した材料を設計することも可能になることと期待されます。
またIDAJでは扱っておりませんが、量子化学計算や分子動力学計算の分野でも汎用ソフトウェアが登場しており、スーパーコンピュータと併用することによって新たな知見が数多く得られるようになってきているようです。こちらは量子コンピュータの普及とともに様相が一変すると予想されます。

材料設計にCAEを適用するには、どうすればいい?

現実のモノづくりにおけるスケールをマクロスケールと考えると、ほとんどの場合、材料設計のためにCAEを適用するには材料のミクロな構造に対して解析することになりますので、ミクロスケールにおける解析をマクロスケールに変換するスケール変換が必要です。これの代表的な手法が前述した均質化法によるマルチスケール解析です。この手法を適用して物性を把握したり設計したりするに適切な材料に多孔質材料や繊維強化プラスチックに代表される複合材料があります。
この均質化法を用いることによって材料の粘弾性特性など広範な機械的物性を得ることができますが、この均質化法は構造解析のみならず熱伝導や流体解析にも応用できる非常に用途の広い手法ですので、材料の様々な物性を予測するには適した手法です。

適用事例

事例1:数値流体解析(CFD)と均質化法による多孔質材料のパラメータ算出方法

布団の中綿、または食器を洗うときに使うスポンジのように、非常に小さな空気の部屋がたくさん繋がっているとみなせる材料のことを多孔質材料と呼びます。こういった材料は音の反射を抑えることが昔からよく知られており、KirchhoffやHelmholtz、Lord Rayleighなどの著名な物理学者による研究に端を発し、今では非常に精緻なモデルを用いて材料内部の音波や振動の伝搬の様子を解析できるようになっています。もちろんこれらのモデルは、世界的に著名な多くの音響解析ソフトウェアに実装されており、多孔質材料による吸音現象を加味した音場を解析することが普通です。

ところが、このような精緻なモデルが開発され広く使われるようになってきているにもかかわらず、いまだ解決していない大きな問題が残されています。それは、その材料をモデル化するために必要なパラメータを得ることが困難極まりないということです。それは、正確な値を得ることができる測定方法がないと言い換えることができるかもしれません。

そのため、多孔質材料の音響特性を予測するためのモデル化であるはずが、先に材料の音響特性を測定し、その特性に合うようなパラメータを“数字合わせ”のようにして探し出すような方法が比較的広く使われています。
このようにしてパラメータを得る方法は、特に、新規の材料開発においては、残念ながら本末転倒と言わざるを得ず、全く役に立ちません。
そこで弊社では、CFDと均質化法という方法を応用した構造解析を援用し、一切の測定を経ることなくパラメータを求める手法をご提案します。この方法でパラメータを得ることによって、様々な音響解析ソフトウェアの多孔質材料モデルへの正確な入力値を与えたり、新材料開発において試作することなく様々な可能性を効率よく検討することができるようになります。

事例1:数値流体解析(CFD)と均質化法による多孔質材料のパラメータ算出方法の図
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