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Solutionソリューション

輸送・製造関連産業

船舶

2016年にパリ協定が発効し、脱炭素化の世界的な機運が高まる中、今後、需要拡大が見込まれる国際海運分野でも、さらなる温室効果ガス(GHG)の排出削減が喫緊の課題となっています。日本では、海上貿易や海事産業の持続的な発展を図りつつ、地球温暖化に対処するための国際的な取り組みに積極的に貢献すべく、2018年には産学官公の連携による「国際海運GHG ゼロエミッションプロジェクト」が設立されました。
海洋開発は、多くの船舶が用いられ、その単価とエンジニアリング費の占める割合が高いことから付加価値ビジネスにもつながるため、日本の海事産業にとって重要な分野です。またそのスケール規模、試作検討の難しさから、シミュレーション技術を用いたバーチャル検討は長年実施されています。
ここでは、船舶開発に関わるCAE技術の一例をご紹介します。

水上浮揚の挙動予測と推進時の伴流予測

混相流と流体構造連成機能を使って、船体の6自由度運動を解析しています。気液界面は、解適合格子機能(AMR:Adaptive Mesh Refinement)で解像度高く解いています。本手法によって、波による水上浮揚体の挙動を予測することが可能です。

混相流と流体構造連成機能を用いた船体の6自由度運動

伴流(後流)とは、流体中を運動する物体または流れの中で静止している物体の後ろに現れる、流れが乱れた領域のことを指します。船舶において伴流は推力を低下させる原因になります。そこで本事例では、プロペラ付近に設置される伴流を均一化するダクトの設計最適化を行いました。

船体が受ける抵抗の最小化を目的として、遺伝的アルゴリズムを用いて計算しました。数日かかる数1,000のジオメトリの設計を自動的に処理し、最適なデザインのダクトを3つ選ぶことができました。いずれもリファレンスに比べて性能が高く、抵抗を最大で4%削減することに成功しています。

船舶の燃費予測

「海上輸送のカーボンニュートラルの実現には、既存燃料の重油から、水素・アンモニア・カーボンリサイクルメタンなどのガス燃料への転換が必須である」( 「次世代船舶の開発」国立研究開発法人新エネルギー産業技術総合開発機構)と言われているとおり、船舶産業では水素・アンモニアを燃料とする船の舶用製品の開発と、カーボンリサイクルメタン等を含むLNG燃料船のメタンスリップ削減のための研究開発が進められています。 新型システムを搭載した次世代の船舶開発を進めるにあたり、CAE技術を用いることで、大規模な試作評価を始める前に、様々な事前検討が可能になります。GT-SUITEでは、船舶の燃費検討に必要なプロペラ(スクリュー)の負荷計算、船体の抵抗計算、速度を自動調整する制御、これらすべてを組み合わせた検討を行うことができます。

画像出典:NEDO グリーンイノベーション基金サイト「次世代船舶の開発」国立研究開発法人新エネルギー産業技術総合開発機構

内燃機関の燃費計算(アクセル自動制御による航行速度指定)

電動機関(バッテリー、FC)の電費計算

GT-SUITEを用いた長い航行条件における電池の性能劣化検討(燃料電池の劣化モデルを追加)

天然ガス・アンモニアの燃焼

各国で次世代燃料を対象にした燃焼機関の開発、温室効果ガスの削減をテーマとした研究が活発に行われています。日本でも石油燃料からの置き換え燃料の検討がなされていますが、新たな課題が浮き彫りになっていることも事実です。
たとえば天然ガス。既燃後は石油燃料よりも二酸化炭素や窒素酸化物などの有害物質の生成量を削減することができますが、主成分にメタンが含まれるため、燃え残りがあると温室効果ガスを発生させるという問題を抱えています。アンモニアは、炭素を含まないため脱炭素として有効な燃料ではありますが、未燃状態だと毒性があり、また燃焼に伴う酸化反応によって大気汚染物質である窒素酸化物に変換された場合は、窒素酸化物濃度の大幅な増加を招きます。
これらの問題は燃焼器が大きくなるほど深刻な問題になるため、特に航続距離の長い海運船舶業界では、グリーンイノベーション基金事業のプロジェクトの一つとして研究開発が進められています。
次世代燃料を用いた各種製品開発においては、メタン・アンモニアの燃え残りの予測と燃え残りを吸着する後処理装置の開発がポイントになるものと考えています。

NEDO グリーンイノベーション基金

■メタン・アンモニアの燃え残りの予測

燃え残りの要因は、主燃焼の火炎が壁面近傍で消炎し、この領域内の燃料が残留することで生じる現象にあると考えられます。このような現象は火炎伝播から壁面消炎までの細かな現象の再現性が重要です。

CONVERGEは、火炎面や壁面を高解像度で解くことができます。燃え残りによるメタンスリップ予測には、詳細反応と壁面消炎モデルを用いて計算します。

デュアルフュエルエンジン燃焼メタンスリップ解析事例(CONVERGE)
■燃え残りを吸着する後処理装置の開発

未燃燃料を完全になくすことは現実的に難しいため、これらを大気中に放出させない適切な後処理技術と、そのための新しい触媒開発が必要です。また、未燃燃料だけでなく有害物質の除去のために、スリップ触媒だけでなく脱硝触媒などを複数組み合わせることが一般的です。
なお、GT-SUITEをはじめとする1Dツールを使えば、触媒単体での化学反応の同定、触媒昇温時や過渡状態における浄化率、複数の触媒を並べた際の予測など、様々な触媒及び使用形態を考慮した解析に幅広く対応できます。また、同定された触媒モデルを動力システムに搭載して計算することで、船舶の推進力や加速度に与える影響を評価したり、そのシステムに排熱回収やオイル回路モデルを組み込むことで、エンジン出力だけでなく、冷却・潤滑の影響まで考慮しながら船舶全体のエネルギーバランスを検討することができます。

GT-SUITEにおける船舶モデルと後処理装置解析

触媒前後の形状が複雑であったり、船舶用の大きな触媒の場合、浄化率は3次元的な要因を受けやすくなります。0/1次元の反応ツールを使用した気相反応や表面反応のメカニズム評価や、触媒単体を、流動含む3次元的な視点での予測評価が有効的です。

CONVERGEは、触媒セルを詳細に解く壁面ベースの反応、触媒領域をポーラスメディアとして解く体積ベースの反応、GT-SUITEの触媒反応との連成解析などに標準機能で対応します。また、0/1次元の反応ツールを用いた、気相反応や表面反応のメカニズム評価も可能です。

リーンNOxトラップ触媒脱硝性能評価(CONVERGE)
尿素SCRのデポジット成分予測(CONVERGE)
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